イージー・ライダー
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イージー・ライダー (1969)
EASY RIDER
 映画『 イージー・ライダー (1969) EASY RIDER 』をレヴュー紹介します。

 映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』を以下に目次的に紹介する。
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の解説及びポスター
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の映画データ
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』のスタッフとキャスト
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 イージー・ライダー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタバレ)です。※ご注意:映画『 イージー・ライダー (1969) EASY RIDER 』の内容やネタバレがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の結末
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の感想
■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 イージー・ライダー (1969) EASY RIDER 』の解説及びポスター
イージー・ライダー
イージー・ライダー

■映画『 イージー・ライダー EASY RIDER 』の解説

 映画『 イージー・ライダー (1969) EASY RIDER 』は、1969 年のカンヌ国際映画祭でデニス・ホッパーが新人監督賞を受賞した、アメリカン・ニュー・シネマのアンダーグラウンドなロード・ムーヴィー。『 イージー・ライダー 』では、全米チャート2位となったステッペンウルフの"ワイルドで行こう Born to be wild "などの当時のアメリカン・ロックを背景に、荒野のハイウェイを走るアメリカン・バイクがとてもカッコいい。『 イージー・ライダー 』はロード・ムーヴィーの伝説となっている。
 『 イージー・ライダー 』では、麻薬で一儲けしたワイアット(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)は、ハーレー・ダビッドソンの改造バイクに跨り、アメリカ南部を巡る。二人がまず目指したのはニューオリンズの謝肉祭。『 イージー・ライダー 』の長髪のヒッピー2人は保守的な南部の人々には受け入れられず…。
 本作『 イージー・ライダー 』でアカデミー助演男優賞にノミネートされたジャック・ニコルソン(『 マーズ・アタック! (1996) MARS ATTACKS! 』『 アバウト・シュミット (2002) ABOUT SCHMIDT 』等に出演)も、独特の雰囲気を発している。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 イージー・ライダー (1969) EASY RIDER 』の映画データ
 上映時間:95分
 製作国:アメリカ
 公開情報:COL
 アメリカ初公開年月:1969年7月14日
 日本初公開年月:1970年1月
 ジャンル:青春/ドラマ/アドヴェンチャー
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【『 イージー・ライダー 』のスタッフとキャスト】
監督: デニス・ホッパー Dennis Hopper
製作: ピーター・フォンダ Peter Fonda
脚本: ピーター・フォンダ Peter Fonda
    デニス・ホッパー Dennis Hopper
    テリー・サザーン Terry Southern
撮影: ラズロ・コヴァックス Laszlo Kovacs
音楽: ステッペンウルフ Steppen Wolf 
    ザ・バーズ The Byrds
    ジミ・ヘンドリックス Jimi Hendrix

出演: ピーター・フォンダ Peter Fonda ワイヤット
    デニス・ホッパー Dennis Hopper ビリー
    アントニオ・メンドーサ Antonio Mendoza ジーザス
    ジャック・ニコルソン Jack Nicholson ジョージ・ハンソン
    カレン・ブラック Karen Black カレン
    ルーク・アスキュー Luke Askew 高速道路の見知らぬ人
    ロバート・ウォーカー・Jr Robert Warker Jr. ジャック
    ルアナ・アンダース Luana Anders リサ
    トニー・ベイジル Toni Bazil メアリー

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ストーリー展開の前知識やネタバレがお好みでない方は、読まないで下さい。
■映画『 イージー・ライダー 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【イージー・ライダー 第01段落】  A man went looking for America and couldn't find it anywhere!(男はアメリカを捜しに行き、どこにもそれを見つけることができなかった。)<アメリカ公開時コピー>

【イージー・ライダー 第02段落】  メキシコ Mexico の殺伐とした乾燥地帯にあるラ・コンテンタというバー La Contenta Bar 。その近くの廃車置場で、ヒッピーの若者、ワイアット Wyatt (ピーター・フォンダ)とビリー Billy (デニス・ホッパー:『 レオポルド・ブルームへの手紙 (2002) LEOPOLD BLOOM / LEO 』)は、スペイン語を話すラテンアメリカ人の小さな小太り男ジーザス Jesus (アントニオ・メンドーサ)から上質の麻薬を買った。

【イージー・ライダー 第03段落】  ロサンゼルス国際空港 Los Angeles International Airport( LAX )。轟音がうるさい離発着する飛行気の真下、ワイアットとビリーはメキシコで買った麻薬を高額で売却。ロールスロイス Rolls Royce に乗る買い手の役で、 1960 年代前半のアメリカのロックシーンで "ウォール・オブ・サウンド The Wall of Sound "と言われる独自の音響手法で名を馳せた音楽プロデューサーのフィル・スペクター Phil Spector がカメオ出演。 1989 年に"ロックンロール名誉の殿堂"入りを果たしたフィル・スペクターだが、2003年 2月、 62 歳の彼は自宅で女性を銃殺した疑いで逮捕された。

♪ザ・プッシャー THE PUSHER ♪
( Performed by Steppenwolf Written by Hoyt Axton )
 大金を手に入れた二人はそのお金でまずバイクを購入したようだ。折角のお金を盗まれないように、ワイアットはビニール製の細長い筒にお金を入れ、バイクのオイルタンクに隠した。

【イージー・ライダー 第04段落】  無口で哲学的な雰囲気のワイアットのバイクとファッションは、もし自分が身長 180 cm以上の立派な体格の男の子だったらやってみたいと思うほど、超カッコいい。ヘルメット、ティアードロップ型のガソリンタンク、そして黒い皮のジャケットの背中が、星条旗 the Stars and Stripes で統一されている。そんなワイアットは、ビリーから"キャプテン・アメリカ Captain America "と呼ばれている。ピーター・フォンダは二枚目俳優ではないけど、このときのスタイルは素敵だと思った。また、付けているサングラスもよく似合っている。皮のジャケットは、『 フライング・タイガー (1942) FLYING TIGERS 』でジョン・ウェイン John Wayne が着ていたものからアイディアを得て、ピーター・フォンダがデザインし、ロサンゼルスの2人の老婦人が作ったそうだ。
 
【イージー・ライダー 第05段落】  ワイアットとは反対に物質的な思考を持つ、口髭をはやした相棒のビリーは、ブッシュハット bush hat に、フリンジが着いた茶色の裏皮のジャンパー、動物の牙で作ったインディアンの首飾りといった出で立ち。2人の装いからかなりの愛国者と見受けられる。彼らが愛するのは、アメリカが象徴する自由なのだろう。映画の題名である"イージー・ライダー easy rider "は俗語で、売春の斡旋業で生計を立てている奴という意味があるそうだ。女性に働かせておいて、簡単にお金を儲けている事からそう言うのかなと思う。麻薬で簡単( easy )にお金をも儲け、バイクに乗って( rider )旅に出るワイアットとビリーをそう捩(もじ)っているのだろう。大金を得てアメリカン・ドリームを掴んだように見える2人だが、2人は本当に理想とする自由を手に入れたのだろうか。 Easy come, easy go. 得やすいものは失いやすいんじゃない?

【イージー・ライダー 第06段落】  2人の名前には、西部劇のヒーロー、ワイアット・アープ Wyatt Earp ( 1848-1929 )とビリー・ザ・キッド Billy the Kid ( 1859-1881 )もしくはワイルド・ビル・ヒコック Wild Bill Hickcock ( 1837-1876 )を連想させる。嘗ての辺境開拓者たちは馬に乗って西へと進んだが、ヒッピーなカウボーイ、ワイアットとビリーはハーレー・ダビッドソン Harley-Davidson の改造バイクに乗り、カウンターカルチャー(対抗文化。ある社会に支配的にみられる文化に対し、その社会の一部の人々を担い手として、支配的な文化に敵対するような文化。<「大辞林」より>)の発達したロサンゼルス Los Angeles から東へと進んで行く。デスバレー国立公園 Death Valley National Park の端にあるゴースト・タウン、バララット Ballarat 。バイクに跨った二人の前には、アメリカの荒野に走る一本のハイウェイ。ワイアットは儀式めいたように腕時計を道に捨てた。時間からも自由になったということを表しているのだろう。昔の開拓者は土地を得る為、自然の猛威やインディアンと闘った。 60 年代の若者は、何を得に、何と闘う?

♪ワイルドで行こう BORN TO BE WILD♪
( Performed by Steppenwolf Written by Mars Bonfire )
Get your motor runnin'
Head out on the highway
Lookin' for adventure
And whatever comes our way
Yeah Darlin' go make it happen
Take the world in a love embrace
Fire all of your guns at once
And explode into space

I like smoke and lightning
Heavy metal thunder
Racin' with the wind
And the feelin' that I'm under
Yeah Darlin' go make it happen
Take the world in a love embrace
Fire all of your guns at once
And explode into space

Like a true nature's child
We were born, born to be wild
We can climb so high
I never wanna die

Born to be wild
Born to be wild

【イージー・ライダー 第07段落】 
▼ステッペンウルフについてちょっとだけ。
 この曲のイントロが流れ、カリフォルニア州 California とアリゾナ州 Arizona の州境にあるコロラド川 Colorado River にかかるハイウェイを2人がバイクで走り、キャスト名とタイトルが画面に現れるシーンはホント、カッコいい。最初の♪ザ・プッシャー♪と上記の2番目の挿入曲を演奏するのは、 1967 年にロサンゼルスで結成されたバンド、ステッペンウルフ。リーダーのジョン・ケイ John Kay がドイツからの移民ということもあってか、バンド名はドイツの作家へルマン・ヘッセ Herman Hesse ( 1877-1962 )の作品『 荒野の狼 』〔原題 Steppenwolf (シュテッペンヴォルフ)〕( 1927 )から取り、英語っぽく発音したもの。 1972 年に解散したが、ジョン・ケイが独自に集めたメンバーで 80 年代中頃からナツメロ・ショーで演奏しているそうだ。還暦を迎えた頃のステッペンウルフは、今も現役で Born to be wild ?

【イージー・ライダー 第08段落】  因みにジョン・マルコヴィッチ John Malkovich (
仮面の男 (1998) THE MAN IN THE IRON MASK
ジャンヌ・ダルク (1999) JOAN OF ARC
HOTEL (2001) HOTEL
アダプテーション (2002) ADAPTATION
リプリーズ・ゲーム (原題) (2002) RIPLEY'S GAME
永遠の語らい (2003) A TALKING PICTURE 』等に出演)も参加していた、
ゲイリー・シニーズ Gary Sinise (
フォレスト・ガンプ/一期一会 (1994) FORREST GUMP
アポロ13 (1995) APOLLO 13
グリーンマイル (1999) THE GREEN MILE
ミッション・トゥ・マーズ (2000) MISSION TO MARS
白いカラス (2003) THE HUMAN STAIN 』
ビッグ・バウンス (2004) THE BIG BOUNCE 』等に出演)等が 1974 年に設立したシカゴの劇団の名前はステッペンウルフ・シアター・カンパニー the Steppenwolf Theatre Company 。この劇団名もヘッセに由来?アヘン入りの鎮痛剤を服用する、精神分裂症の主人公が「魔法劇場」という幻想の世界へ入っていくという内容から、ヘッセの『 荒野の狼 』はヒッピー達のバイブルだったそうだ。 60〜70 年代が青春だった両親に聞くと、ヘッセの本を読んでいると言うと、なんだかシャレた感じで当時はカッコよかったらしい。

【イージー・ライダー 第09段落】 
▽ストーリーに戻る。
 夜。その風貌のせいだろう、モーテル(ルート 66 沿いアリゾナ州フラグスタフ Flagstaff から西へ 10 マイルのベルモント Bellemont にある Pine Breeze Inn 。今は廃屋となっているみたい。)への宿泊を拒否された2人は、野宿をすることに。焚き火を囲み、ビリーが楽しそうに言う。" I'm goin' down to Mardi Gras. I'm gonna get me a Mardi Gras queen. (マルディグラに行くぜ。マルディグラの女王を抱くんだ。)"ここで2人の旅の目的が分かる。ルイジアナ州 Louisiana の州都ニューオリンズ New Orleans で2月中旬から3月上旬に開催されるアメリカ合衆国最大のお祭り、マルディグラに行こうとしているのだ。ニューオリンズでは、マルディグラの日〔※〕をクライマックスに一ヶ月以上前から( 11日前からは毎日)パレードが行われる。

【イージー・ライダー 第10段落】  ※マルディグラ Mardi Gras は告解火曜日(懺悔火曜日)のフランス語で、英語に直訳すると fat Tuesday となる。英語では Shrove Tuesday と言う。断食を行う四旬節(イエスの受難・十字架の死をしのんで修養(斎戒)する、復活祭の前の 40 日間。<「大辞林」より>)の前には、肉食と告別するお祭りである謝肉祭 carnival があり、その最終日のことだ。(四旬節の初日である灰の水曜日 Ash Wednesday を謝肉祭の最終日とするところもある。)主にカトリック教国のお祭りであるマルディグラがニューオリンズで行われるのは、嘗てフランスやスペインの領地となっていたことがあるからだろう。 1718 年、フランスによって築かれたニューオリンズは、オルレアン公爵 le duc d'Orleans ( 1747-1793 :『 グレースと公爵 (2001) THE LADY AND THE DUKE 』参照)に因んで名付けられたそうだ。

【イージー・ライダー 第11段落】  ニューオリンズに到着したらたっぷり食べようとはしゃいでるビリーに対して、吸っている麻薬のせいだろうか、さっきモーテルで断られたからだろうか、ワイアットは暗い。
ビリー: You're pulling inside man. You're getting a little distance tonight.(沈んでるな。今日は少しヘンだぜ。)
ワイアット: Yeah, well, I'm just getting my thing together.(考え事をしてたんだ。)

【イージー・ライダー 第12段落】  翌朝。昨晩から画面が変わる時に、翌朝の映像がフラッシュバックのように現れる。先に目覚めたワイアットが見た小屋の壊れた屋根の映像だ。場面変換の時に、本作ではこの技法がよく使われている。麻薬による幻覚症状の感覚を表すためだろうか。

【イージー・ライダー 第13段落】  ワイアットのバイクのタイヤがパンクし、2人は修理道具を借りる為に牧場に寄った。そこの牧場主は、モーテルの男とは違った。二人のバイクを褒め、修理のための道具を貸してくれた上に、家族一緒の食事にも招いてくれた。ビリーが帽子を被ったまま、いきなりご飯を食べようとすると、牧場主は帽子を脱ぐように注意した。家の外にある長いテーブルには、牧場主とカトリック教徒の従順な若いメキシコ人妻との間にできた、子供がズラリと座っている。家長の席に座った牧場主は彼らと一緒に神に祈りを捧げた。

【イージー・ライダー 第14段落】  ロサンゼルスに憧れたと言う牧場主も、嘗てはワイアットたちと同じようにアメリカン・ドリームを追ったのだろう。そしていつしか放浪を止め、土地に根を生やした。だから彼はヒッピーな風貌の若者にも理解を示す。この牧場主は建国当時の古き良きアメリカを象徴した人物なのだろう。ワイアットは牧場主に言う。" You've got a nice place. It's not every man that can live off the land, you know. You do your own thing in your own time. You should be proud. (あんたは見事な土地を持っているよ。根を張って生きる奴は少ない。独立して生きるのは立派だよ。)"

♪ワズント・ボーン・トゥ・フォロー WASN'T BORN TO FOLLOW ♪
( Performed by The Byrds Written by Gerry Goffin & Carole King )

【イージー・ライダー 第15段落】  再びバイクに乗った2人は、ハイウェイでヒッチハイクしている見知らぬ男 Stranger on Highway (ルーク・アスキュー:『 フレイルティー/妄執 (2001) FRAILTY 』等に出演)を拾った。男はワイアットのバイクの後部座席に乗った。ワイアットのバイクの方がビリーのバイクより前輪が普通より前についていて、より高いエイプハンガー ape hanger (改造バイクに付ける、とても高くて角度のついたハンドル)になっている。演じるピーター・フォンダがベテラン・ライダーだからだ。それで、2人乗りの運転をするのも、あんまりバイク経験のなかったデニス・ホッパーではないのだろう。しばらくして、2台のバイクは、ガソリンスタンドに入った。

【イージー・ライダー 第16段落】 
▼ガソリンスタンド Enco についてちょっとだけ。
 映画に出てくるのは、ちゃんと儲かってるのかなと思うほど、何もないただっ広い土地にある、 Enco のガソリンスタンド。この the Sacred Mountain という地名(?)にあるスタンドは、ハイウェイ 89 のフラグスタフの北にバイクで 30 分の所辺りにあるらしい。 Enco (エンコと発音?)という名前はスタンダード石油会社 Standard Oil Company の商標が、 1972 年にエクソン Exxonと統一されるまで、 60 年代から 70 年代初期にかけてアメリカの 19 の州で使われていたもの。因みに東海岸のほうでは Esso という名前だったそうだ。世界一の石油会社エクソンは 1999 年に第二位のモービルとの合併が完了し、現在( 2003 年 5 月中旬)はエクソンモービル・コーポレーション Exxon Mobil Corporation という社名になっている。エッソ、モービル、ゼネラルとどこのスタンドで入れても同じガソリンだ。

【イージー・ライダー 第17段落】 
▽ストーリーに戻る。
 ヒッチハイクの男がビリーのガソリンタンクに給油しようとするが、ビリーは自分でする。それで男はワイアットのバイクのガソリンを入れる。ビリーはワイアットを引っ張り、タンクには全財産が入っているのに、男に知れたらどうすると怒った。しかし、ワイアットは全然気にしていない。男は2人に代金は自分が払っておいたと言った。ん?おかしい。映像には男がガソリンスタンドの店主にお金を払っているようなスキはない。もしかして、ガソリン入れ逃げ?それとも男はここのスタンドにツケ払いでもしているのだろうか?メキシコ系の少女が店の窓からバイクを出発させるワイアットたちを見ている。ホントにお金払ったの?

【イージー・ライダー 第18段落】  余談になるが、私は学生の時、社会勉強の為にガソリンスタンドで短期間のアルバイトをしたことがある。やっぱりガソリンを注いで嬉しいのは、ハイオクのいっぱい入るベンツなどの高級車だ。頭も何故か深く下がってしまう、現金な私。ハーレー・ダビッドソンとかみたいな大きいバイクにはガソリンを入れたことがないからわからないけど、原付バイクは注いでもあんまり嬉しくない。だって、ガソリンタンクが小さいからさ…。

♪ザ・ウェイト THE WEIGHT ♪
( Performed by The Band Written by Jaime Robbie Robertson )
 アリゾナ州北東部にあるモニュメントバレー Monument Valley を楽しく滑走するバイク。

【イージー・ライダー 第19段落】  その夜、3人は、北米インディアン、ナバホ族 Navajo の廃墟で野宿する。こういう風にバイクで旅し、野宿なんかするのも、いいんじゃないかと映画を観ていて思い始めていたのだが、ここのシーンを観てその考えは即座に却下。ワイアットが焚き火に寄って来た蛾を掴んだのだ。そうだ、こういうところには奴らがいっぱいいる。私にはこんな旅はできないと諦めた。

【イージー・ライダー 第20段落】  麻薬を楽しみながら、3人で話をする。ビリーがヒッチハイクの男にどこから来たのか訊くが、男は都会としか答えない。都会はどこも同じだからだそうだ。そう言えば、この男は配役名も Stranger on Highway とあるだけで、名前がない。名前とか出身とかは、ヒッピー達にとってはどうでもいいことなのか。
ワイアット: You ever want to be somebody else? (誰かになりたいと思ったことは?)
ヒッチハイクの男: I'd like to try Porky Pig. (俺は太ったブタになりたいよ。)
ワイアット: I never wanted to be anybody else. (俺は誰にもなりたくない。)

【イージー・ライダー 第21段落】  ニューメキシコ州タオス Taos New Mexico にある 1450年代頃に建てられた日干しレンガ造りの家が立ち並ぶ、先住民プエブロ族の村 The adobe Pueblo village of Taos を通り、ワイアットとビリーは、ヒッチハイクの男を彼のコミューン commune へと連れて行った。ヒッチハイクの男は、ヒッピーの若者たちが集うコミューンの一員みたいだ。自給自足の共同生活をしている彼らに、ビリーは馴染めないところもあるが、ワイアットは共感できるようだ。ワイアットの気持ちは、映画制作者の気持ちだろう。不毛の土地に種をまく若者を見た時のワイアットの台詞に、デニス・ホッパーたちが彼らにアメリカの希望を感じているのがわかる。
ビリー: This is nothing but sand, man. They ain't gonna make it, man. They ain't gonna grow anything here.(砂地じゃ何も育たないよ。)
ワイアット: They're gonna make it. Dig, man. They're gonna make it.(きっと育つさ。きっと。)

【イージー・ライダー 第22段落】 
▼ヒッピーについてちょっとだけ。
 第二次世界大戦が終了し、 1950 年代に繁栄を極めたアメリカ。しかし、その繁栄の裏で、『 エデンより彼方に (2002) FAR FROM HEAVEN 』でも描かれていたように、様々な問題が持ち上がってきていたのも確かだ。 50 年代に幼少期を過ごした 60 年代の若者たちは、その社会の歪に気付き、自分たちの社会へ問題提起をし始める。環境問題は若者たちに自然への回帰を促し、ソ連の脅威や経済優先の社会は共産主義への憧れにもなった。自分たちの先祖が骨身を惜しんで働き、築いた豊かさの中に生きているからこそ、そんな疑問も持てるようになったのにも関わらず、若者は、これまでの伝統や既成概念に縛られた社会を否定する。そんな若者たちの集団をヒッピー hippie というのだろう。

【イージー・ライダー 第23段落】  そんなヒッピーの若者達が、自分たちの理想を実現する為に、築いたのがコミューンと言われるものだ。ライフスタイルの変換を目指し、カリフォルニア州やニューメキシコ州の牧場や打ち捨てられた家や洞窟で、彼らは居住空間、責任分担、子供、財産などを共有して生きた。そんなコミューンを多くの若者がヒッチハイクで渡り歩いたそうだ。ワイアットが望んだ様に、そんなヒッピーたちの理想は、世界に豊かな実りをもたらすことができたのだろうか。

【イージー・ライダー 第24段落】   60 年代は暴力で彩られていく。ベトナム戦争( 1960年代初頭 -1975 )やケネディ大統領暗殺( 1963 )など。マーティン・ルーサー・キング牧師が暗殺( 1968 )されると、公民権運動もより暴力的傾向を帯びていく。 Love & Peace を訴える若者を横目に、本作が公開された 1969 年には、コミューンを形成するヒッピーの若者達が起こしたショッキングな事件があった。「テート/ラビアンカ殺人事件」〔※〕である。この事件のイメージもあって、60 年代を体験していない私にとっては、こういうコミューンって、全く共感できない。LSD(リセルグ酸ジエチルアミド lysergic acid diethylamide 当時主流のドラッグ)でラリッてたら、平和なんて実現できるわけないやん。

【イージー・ライダー 第25段落】  ※テート/ラビアンカ殺人事件は、 1969 年 7月〜8月、コミューンの教祖チャールズ・マンソン Charles Manson ( 1934- )を信奉する若者たちが起こした猟奇殺人事件。ロサンゼルスの高級住宅街を舞台に、ロマン・ポランスキー Roman Polanski 監督(
ナインスゲート (1999) THE NINTH GATE
戦場のピアニスト (2002) THE PIANIST 』等を監督)の当時の妊娠中の妻シャロン・テート Sharon Tate を含む8名が惨殺された。日本でオウム真理教の事件が起こったとき、この事件との類似性が言われた。

【イージー・ライダー 第26段落】  そんなヒッピー達だが、彼らが 20 代後半に差し掛かると、貧乏な奴の言うことに誰も耳を貸さないということに気付いたのだろうか、ビジネスに勤しむ様になる。個人用小型コンピュータを世に送り出したアップルコンピュータ社の創設者スティーブ・ジョブス Steve Jobs 氏( 1955- )らも元ヒッピーというように、カウンターカルチャーで養った自由な発想で、コンピュータ技術も発達。 90 年代後半には、アメリカに新たな繁栄をもたらすのである。

【イージー・ライダー 第27段落】  ヒッピー達が提起した問題は今も未解決のままだが、社会が停滞する 21 世紀こそは、ドラッグ・カルチャーやフリー・セックスは置いといて、彼らの提唱したライフスタイルの変換が余儀なくされるかもしれない。太極拳をする(東洋人の目には)怪しいコミューンのリーダー、ジャック Jack(ロバート・ウォーカー・Jr)が食事の前に捧げたお祈りの言葉のような生活が地球を救うと思う。
We have planted our seeds. We ask that our efforts be worthy to produce simple food for our simple taste. We ask that our efforts be rewarded. And we thank you for the food we eat from other hands - that we may share it with our fellow man and be even more generous when it is from our own. Thank you for a place to make a stand. (Amen.)
(種をまきました。我らの努力が実り、ささやかな食物を生んでくださいますように。努力が報いられますように。外から求めた食物を仲間と分かち合い、外部の人にも分けられますように。この場を与えられたことを感謝します。)

【イージー・ライダー 第28段落】 
▽ストーリーに戻る。
♪ワズント・ボーン・トゥ・フォロー WASN'T BORN TO FOLLOW ♪
 ワイアットを気に入ったコミューンの女の子リサ Lisa (ルアナ・アンダース)に誘われ、彼女の友人サラ Sarah と一緒に、ワイアットとビリーは川の水を利用したかのような大腸菌ウヨウヨっぽい大自然の中の露天プールで裸になって楽しく泳ぐ。

【イージー・ライダー 第29段落】  夕方、ワイアット達がコミューンを去るとき、ヒッチハイクの男はLSDの錠剤を渡し、" When you get to the right place, with the right people, quarter this. You know, this could be the right place. The time's running out. (信頼できる連中に会ったら、これを。ここでもいいが。君次第だ。)"とワイアットだけにここに留まって欲しいことを示唆した。ワイアットはまんざらではなかったが、ビリーが早く出ようと急かすので、男の申し出を断った。

【イージー・ライダー 第30段落】  ニューメキシコ州ラスベガス Las Vegas, New Mexico (ネバダ州 Nevada のラスベガスではない)の町の通りで行われているパレードのブラスバンドの後を、エンジンを切ったバイクに乗って楽しく付いて行くワイアットとビリー。そんな2人は無許可でパレードに参加していると地元警察に捕まり、拘置所に入れられる。そこで2人は、地元名士の息子でアル中っぽい、弁護士のジョージ・ハンソン George Hanson (ジャック・ニコルソン:
郵便配達は二度ベルを鳴らす (1981) THE POSTMAN ALWAYS RINGS TWICE
イージー・ライダー (1969) EASY RIDER
バットマン (1989) BATMAN
マーズ・アタック! (1996) MARS ATTACKS!
アバウト・シュミット (2002) ABOUT SCHMIDT
N.Y.式ハッピー・セラピー (2003) ANGER MANAGEMENT
恋愛適齢期 (2003) SOMETHING'S GOTTA GIVE 』等に出演)に出会う。昨夜酔っ払いすぎたジョージは一晩を拘置所で過ごしていた。

【イージー・ライダー 第31段落】  ジョージのコネと 25 ドルの罰金で拘置所から出られたワイアットとビリーは、警察の外に出て、ジョージに自慢のバイクを見せる。ここで強烈なジャック・ニコルソンの演技。" Here's to the first of the day, fellas. To ol' D. H. Lawrence. (今日の日を記念して、D・H・ロレンスに。)"と言って、ジムビーム Jim Beam のキツいバーボンを飲み、" Neh! Neh! Neh! Fuh! Fuh! Fuh! Indians. "と、来た来た来た〜って感じで叫び、右手をニワトリの真似をするように上下に振るのだ。どうしてイギリスの文学者D・H・ロレンス( 1885-1930 )なんだろうと思ったら、ニューメキシコ州タオス郡サン・クリストバル San Cristobal Taos County New Mexicoの墓地には彼のお墓があるんだ。

【イージー・ライダー 第32段落】  6〜7回マルディグラのお祭りに行こうとしたが、いつも州境止まりだったと話すジョージ。彼は、旧態依然とした小さな田舎町から出て自由を得たいと思っているのだが、自由の怖さも分かるので、町での名士の息子として保護され、優遇された暮らしを捨てることができない。そんな欲求不満を、お酒を飲んで紛らわしている、甘ったれのお坊ちゃまなのだ。ルイジアナ州知事から貰ったと言う、ニューオリンズにある娼館のマダム宛ての名刺を財布から出したジョージは、かなりワイアットたちと一緒に行きたそうだ。ジョージはどのくらいで目的地に着くのかワイアットたちに尋ねた。2〜3日の旅ならまたすぐここへ戻って来られる。是非行きたいと言うジョージに、ワイアットはヘルメットを持っているかどうか尋ねた。

【イージー・ライダー 第33段落】 
♪鳥になりたい IF YOU WANT TO BE A BIRD ♪
( Performed by The Holy Modal Rounders Written by Antonia Duren )
 アメフトのヘルメットを被って、ワイアットのバイクの後部座席に座っているジョージは、とても嬉しそう。BGMのように、鳥になった気分なのだろう。ビリーと一緒になって、両腕を鳥みたいにばたつかせたりする。

【イージー・ライダー 第34段落】  夜になり、3人は木々の下で野宿する。ワイアットがジョージにマリファナを勧めると、経験のないジョージは戸惑ったが、怖れつつも試してみることに。すでにもう幻覚症状気味なビリーが空にUFOみたいなものを見たと言い始めると、ハイになってきたジョージは、宇宙人についての自説をぶちまける。ジョージが暮らすニューメキシコ州は 1947 年にロズウェル Roswel でUFOが墜落したと噂される事件が起こるなど、UFOとは縁の深いところ。そのせいだろうか、それともマリファナのせいだろうか、ジョージはその存在を信じきっている。彼によると、地球にも来ているという金星人たちの社会では、戦争も通貨制度も指導者もなく、高度に発達した技術のお陰で日常の必要は競争なしで満たせるそうだ。まるでヒッピー達の理想のような社会だ。

【イージー・ライダー 第35段落】  嘘っぽいというビリーに、ジョージはより宇宙人について捲くし立てた。話が一段落した時、ワイアットはジョージにマリファナの感想を尋ね、その残りを明日にとって置くようにジョージにアドバイスする。" It gives you a whole new way of looking at the day. (世界の見方が変わるぜ。)"と言うワイアットの言葉に、ジョージはすっかり薬物への警戒心が無くなったようだ。撮影では、ピーター・フォンダもデニス・ホッパーもジャック・ニコルソンも実際にマリファナを吸っていたそうだ。

♪ドント・ボガート・ミー DON'T BOGART ME ♪
( Performed by Fraternity of Man Written by Elliott Ingber & Larry Wagner )

♪イフ・6・ウォズ・9 IF SIX WAS NINE ♪
( Performed by The Jimi Hendrix Experience Written by Jimi Hendrix )

【イージー・ライダー 第36段落】  ルイジアナ州に入った3人は、ニューオリンズに到着した。墓地、コロニアル建築様式の邸宅など、独特な雰囲気を持つ街や、貧しい黒人たちの住宅のある地域をバイクで走る。『 ダブル・ジョパディー (1999) DOUBLE JEOPARDY 』等でもニューオリンズの街を観たことがあるが、色々独自の文化があるようで、面白そうな街だ。

【イージー・ライダー 第37段落】  町外れのレストランに入った3人。♪ LET'S TURKEY TROT ♪( Performed by Little Eva Written by Gerry Goffin & Jack Keller )がジュークボックスから流れている。店内には対照的な2つのグループの客。1つは、排他的な思想を持つ、保安官を中心とするおじさんのグループ。もう1つは、新しいトレンドに敏感な女の子たちのグループ。一方のテーブルからは、ワイアットたちへのあからさまな悪口が聞こえ、もう一方からは、ワイアットたちに興味津々の乙女の囁きが聞こえる。革新的なものは、いつも賞賛されると同時に非難の対象にもなる。ウェイトレスは注文を訊きに来ない。保安官たちは陰口でワイアットたちを挑発し、リンチを仕掛けるきっかけを作ろうとしている。
保安官: What'cha think we ought to do with 'em?(奴らをどうする?)
男: I don't damn know, but I don't think they'll make the parish line.(郡境で片付ける。)

【イージー・ライダー 第38段落】  3人はレストランを出た。女の子達も出てきて、バイクに乗せて欲しいとワイアットたちに群がった。レストランの窓からは店内の男達が見ている。南部の差別の厳しさを知るジョージは、「窓から男が見ている」と歌って、彼女達の要望に応えようとしていたビリーに危険を知らせた。ワイアットたちは問題を起こさず、店を後にしたのだが…。

【イージー・ライダー 第39段落】  夜。ワイアットたちは今日も野宿だ。このシーンでジョージとビリーが話すことが、この映画のテーマだ。
ジョージ: You know, this used to be a helluva good country. I can't understand what's gone wrong with it.(アメリカはいい国だった。どうなっちまったんだ。)
ビリー: Huh. Man, everybody got chicken, that's what happened, man. Hey, we can't even get into like, uh, second-rate hotel, I mean, a second-rate motel. You dig? They think we're gonna cut their throat or something, man. They're scared, man.(臆病になったのさ。2流のモーテルさえ泊まらせないんだ。俺達が、喉でも掻っ切ると思ってんのさ。奴らはビビってやがるんだ。)
ジョージ: Oh, they're not scared of you. They're scared of what you represent to 'em.(彼らは君たちを恐れたりなんかしてないよ。君達が象徴するものが怖いのさ。)
ビリー: Hey man. All we represent to them, man, is somebody needs a haircut.(長髪が目障りなだけさ。)
ジョージ: Oh no. What you represent to them is freedom.(いいや。君たちに自由を見るのさ。)
ビリー: What the hell's wrong with freedom, man? That's what it's all about.(自由のどこが悪いんだ。それが肝心なところじゃないか。)
ジョージ: Oh yeah, that's right, that's what it's all about, all right. But talkin' about it and bein' it - that's two different things. I mean, it's real hard to be free when you are bought and sold in the marketplace. 'Course, don't ever tell anybody that they're not free 'cause then they're gonna get real busy killin' and maimin' to prove to you that they are. Oh yeah, they're gonna talk to you, and talk to you, and talk to you about individual freedom, but they see a free individual, it's gonna scare 'em.(そう、何も悪くないさ。自由を説く事と自由である事は別だ。カネで動くものは自由になれない。アメリカ人は自由を証明する為なら殺人も平気だ。個人の自由についてはいくらでも喋るが、自由な奴を見るのは怖い。)
ビリー: Mmmm, well, that don't make 'em runnin' scared.(怖がらせたら?)
ジョージ: No, it makes 'em dangerous.(いいや、非情に危険だ。)

【イージー・ライダー 第40段落】  焚き火の火も消え、3人が寝静まった頃、彼らの自由を恐れる偽善的アメリカ人がやって来た。たぶん昼間にレストランにいた連中に違いない。彼らは眠っている3人を毛布の上から棒で思い切り叩きまくった。ワイアットとビリーは何とか助かったが、ジョージは死んでしまった。ジョージはせっかく自由になろうと故郷の田舎町を羽ばたいたのに…。自由で居ることは大変なことなのだ。

♪キリエ・エレイソン KYRIE ELEISON ♪
( Performed by The Electric Prunes Written by David Axelrod )

【イージー・ライダー 第41段落】  連祷(れんとう…カトリック教会の礼拝で、司式者と会衆とが交互にかわす連続の祈り。<「大辞林」より>)という意味のBGMが流れる中、ジョージの死を悼むように、レストランで食事をするワイアットとビリー。ジョージも喜ぶだろうと、ビリーの提案で2人は娼館に行くことにした。豪華な装飾の娼館。ビリーは結構楽しんでいるが、ワイアットは静かに目を瞑っている。

【イージー・ライダー 第42段落】  娼婦の女の子を部屋で待っている二人。ワイアットは壁に書かれてある言葉を読んだ。" If God did not exist, it would be necessary to invent him. (もし神が不在なら、発明する必要がある。)"そして" Death only closes a man's reputation and determines it as good or bad. (人の価値は棺を覆って初めて定まる。)"という言葉を壁に見た時、ワイアットはデジャビュを感じた。ハイウェイの横で燃えている自分のバイクを思ったのだ。

【イージー・ライダー 第43段落】  マダムが2人の女の子カレン Karen (カレン・ブラック)とメアリー Mary (トニー・ベイジル)を連れてきた。ビリーが背の高いカレンを望んだので、ワイアットの相手は黒髪のメアリーとなった。しかし、そんな気分にはなれないワイアットは、彼女たちと一緒に外に出てマルディグラを見物することに。街では派手なパレード。ジャズ発祥の地であるニューオリンズだけあって、BGMで流れる♪聖者が街にやってくる WHEN THE SAINTS GO MARCHING IN ♪も一味違って雰囲気がある。ワイアットたちは眠ることなしに翌日も街を歩き回った。墓地の近くで、ワイアットは道端に死んだ犬を見つけた。ビリーはその犬に触ってみる。

【イージー・ライダー 第44段落】  墓地を訪れた4人。たぶん例のヒッチハイカーから貰ったLSDを、ワイアットは3人に分け与えた。幻覚症状の中、淫らな行為にふける。制度化された人生の終焉の場である墓場で、ワイアットたちは既存の権威を否定した。

【イージー・ライダー 第45段落】 
♪フラッシュ・バム・パウ FLASH, BAM, POW ♪
( Performed by The Electric Flag, An American Music Band Written by Mike Bloomfield )
 またバイクに乗って旅に出る二人。マルディグラは終わった。今度はどこに行くのかな?

【イージー・ライダー 第46段落】  夜。また野宿。欲望のマルディグラが終わると、修養の時期の四旬節。二人の考えも出発前とは違ってきているようだ。ビリーはそんな自分の不安を打ち消す為だろうか、ワイアットに話す。自分たちは金持ちになったし、フロリダで引退しよう。ワイアットは答える。" We blew it. (無駄だよ。)"

【イージー・ライダー 第47段落】 
♪イッツ・オーライト・マ IT'S ALRIGHT MA (I'M ONLY BLEEDING) ♪
( Performed by Roger McGuinn Written by Bob Dylan )
 ニューオリンズ以前の乾燥地帯とは違って、緑も多くなっているし、工業も発達してきている町を、2人はバイクで進む。ガソリンスタンドも Enco ではなく、 Esso になっている。・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【イージー・ライダー 第48段落】  近くにミシシッピ川 Mississippi River が流れるハイウェイを走っている時、2人の後ろからトラックがやって来た。ヒッピースタイルの若者を見て、脅かしてやろうとトラックの助手席の男がビリーにショットガンで狙いをつけてきた。脅かすだけだと思っていたら、その男は本当にビリーを撃った。先を走っていたワイアットは戻ってビリーの元に駆けつけ、血を流して道路わきに倒れる友人に自分の星条旗が付いた皮のジャンパーを掛けてやる。そしてトラックが走り去っていった方向にバイクを猛スピードで走らせた。トラックは方向を変えてワイアットに向かって走ってくる。そのすれ違いざま!ワイアットのバイクは吹っ飛び、彼が娼館で見たデジャビュと同じに燃えた。2人のイージー・ライダーは、道端の犬のように死んだのだ。

♪イージー・ライダーのバラード BALLAD OF EASY RIDER ♪
( Performed by Roger McGuinn Written by Roger McGuinn )

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映画『 イージー・ライダー 』の感想
 私はこの映画を、『 ボニーとクライド/俺たちに明日はない (1967) BONNIE AND CLYDE 』から始まるアメリカン・ニュー・シネマの「オオカミと7匹の子ヤギ」だと思った。グリム童話「オオカミと7匹の子ヤギ」に出てくるヤギは、封建社会を支える農奴を、オオカミはその社会に属さない自由な人々を象徴していると、昔、立ち読みした本に書いてあったように思う。この本は、題名も覚えてないし、内容もうろ覚えなんだけど、そんなようなことだった。農耕社会に縛られたヤギは自由に森を行き来するオオカミのことを羨ましくも、恐ろしくも思っている。それは、自由という、自分たちの理解を超えたものをオオカミが持っているから。それで土地に根付いたものが持つ独特の老獪さで、オオカミを殺してしまうのだ。イージー・ライダーはショットガンで撃たれただけだけど、昔のお話はもっと残虐。お腹を切り裂いて、石を詰めるんだから!その本を立ち読んだ、学生の頃の私は、オオカミのような自由な存在になりたいと思ったものだが、今はしっかりヤギ側の人間になってしまった。

 父は名優ヘンリー・フォンダ Henry Fonda、姉はジェーン・フォンダ Jane Fonda という芸能一家(娘は『 キス・オブ・ザ・ドラゴン (2001) KISS OF THE DRAGON 』等に出演のブリジット・フォンダ Bridget Fonda )に生まれたピーター・フォンダ( 1939 年 2 月 23 日生まれでワイアットと同じ魚座)は、この映画の成功で”キャプテン・アメリカ”というカウンターカルチャーの象徴的存在になった。たぶん偉大な父親を持つ息子であることのストレスが、スクリーン以外でも彼がカウンターカルチャーにどっぷりつかった原因でもあるのだろう。ジョン・レノン John Lennon が書いた♪ She Said She Said ♪は、ピーター・フォンダとのLSD体験に触発されてできた曲らしい。 80 年代は低迷が続いたが、 90 年代はうって変わって活躍し、1997年には『 木洩れ日の中で (1997) ULEE'S GOLD 』でアカデミー主演男優賞にノミネート、また、ゴールデングローブ賞等を獲得する。”キャプテン・アメリカ”と同じくらいのはまり役にやっと出会えて、ホッとしてるかな。

 70 年代、ドラッグの泥沼に陥っていたデニス・ホッパーは、 1936 年 5 月 17 日生まれの牡牛座。ヴェネチア国際映画祭では喝采を浴びた映画『 ラストムービー (1971) THE LAST MOVIE 』(ピーター・フォンダも出演)だが、配給会社とのゴタゴタで、ホッパーはハリウッド追放に。 80 年代に入って、徐々にアメリカ映画へ進出するようになり、デヴィッド・リンチ David Lynch 監督の『 ブルーベルベット (1986) BLUE VELVET 』で完全復活。ジョディ・フォスター Jodie Foster (
タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER
アンナと王様 (1999) ANNA AND THE KING
ロング・エンゲージメント (2004) UN LONG DIMANCHE DE FIANCAILLES (原題) / A VERY LONG ENGAGEMENT (英題) 』等に出演)と共演し、監督もした『 ハートに火をつけて (1989) CATCHFIRE 』(この映画でもホッパーがクレジットを拒否するといったゴタゴタがあったみたいだけど。)を観てから、私はデニス・ホッパーが結構お気に入りデス。本作のような時代を象徴した素晴らしい作品をまたガツンと作って欲しいです。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず18484文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      Easy Rider Movie
       http://home.earthlink.net/~sirkus/index.html
      Greatest Films
       http://www.filmsite.org/
      ENAK 流行+芸能 2月号
       http://www.sankei.co.jp/edit/bunka/2003/feb/kiji/0204phil.html
      AMG All Music Guide
       http://www.allmusic.com/index.html
      Handbook of Texas Online: EXXON COMPANY, U.S.A.
       http://www.tsha.utexas.edu/handbook/online/articles/view/EE/doe4.html
      Yahoo! Reference
       http://education.yahoo.com/reference/
       Information Pleasehttp://www.infoplease.com/index.html
      第10章 〜ビル・ゲイツと2人のスティーブ【人物】
       http://www.shoeisha.com/book/pc/20c/chap10/man.htm
      DeAGOSTINI 週刊マーダー・ケースブック1 シャロン・テート殺人事件

※台詞の日本語訳は、ほぼヴィデオ字幕の引用です。
■映画『 イージー・ライダー (1969) EASY RIDER 』の更新記録
2003/05/17新規: ファイル作成
2004/06/07更新: ◆一部追記および書式
2004/07/14更新: ◆テキスト一部とリンクおよびファイル書式
2005/03/09更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
2005/05/28更新: ◆データ追加
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幸田 幸
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