リトル・ストライカー
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リトル・ストライカー (2000)
リトル・ストライカー
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THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE

【解説】
 映画『 リトル・ストライカー (2000) THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE 』は、楽しいし、感激( TSUTAYA のビデオの箱には小野伸二選手もお薦めみたいなシールが貼られていた。本当か?)するし、It’s only football but I like it.っていう感じでめっちゃイケテル、ジョン・ヘイ監督の 2000 年作品。
 映画『 リトル・ストライカー 』の主人公、15 歳の少年ジミー・グリンブル(ルイス・マッケンジー)は、プロのサッカー<イギリスのお話だからこれよりフットボールと書きます>選手を目指しているが、問題を抱えている。彼は人前ではどうもうまくプレイすることができないのだ。独りで練習している時は、物凄く上手なんだけど。それに、彼はいわゆるいじめられっ子。理由は、応援しているフットボール・チームが学校の皆とは違うから。そんな冴えないジミーが、ある日謎の老女からアンティークなフットボール・シューズをもらうことになるのだが…。
 映画『 リトル・ストライカー 』では、今や英国を代表する俳優であるロバート・カーライルが、過去の栄光に傷ついている体育の先生を好演していた。イカレた役も上手いけど、ダメ父とかこの映画のダメ先生みたいな役もいい味出してる。映画『 リトル・ストライカー 』の主演の新人俳優ルイス・マッケンジーもかわいかった。映画『 リトル・ストライカー 』は、おススメです。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
■『 リトル・ストライカー 』のデータ
 上映時間 106分
 製作国 イギリス/フランス
 公開情報 劇場未公開
 ジャンル ドラマ/スポーツ
 《米国コピーTagline》
【スタッフとキャスト】

監督: ジョン・ヘイ John Hay
製作: ジェレミー・ボルト Jeremy Bolt
    アリソン・ジャクソン Alison Jackson
    サラ・ラドクリフ Sarah Radclyffe
製作総指揮: アンドレア・カルダーウッド Andrea Calderwood
    ビル・ゴッドフリー Bill Godfrey
    アレクシス・ロイド Alexis Lloyd 
脚本: ジョン・ヘイ John Hay
    リック・カーマイケル Rik Carmichael
    サイモン・メイル Simon Mayle
撮影: ジョン・デ・ボーマン John De Borman
音楽: サイモン・ボスウェル Simon Boswell
    アレックス・ジェームズ Alex James 
 
出演: ルイス・マッケンジー Lewis McKenzie ジミー・グリンブル
    ロバート・カーライル Robert Carlyle エリック・ウィラル
    ジーナ・マッキー Gina McKee ドナ
    レイ・ウィンストン Ray Winstone ハリー
    ジェーン・ラポテア Jane Lapotaire  老婆
    ベン・ミラー Ben Miller ジョニー・トゥー・ドッグ
    サーミア・ガーディー Samia Ghadie サラ
    ボビー・パワー Bobby Power ゴードン・バーリー
ネタばれ御注意!
 このレヴューは「テキストによる映画の再現」を目指して作文しています。よって、ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
<もっと詳しく>

 私はこの 2002 年のワールド・カップのお陰で、フットボールが面白いと思うようになったが、まだまだこのスポーツについての知識がない。この映画に登場してきた、「マンチェスター・シティ( Manchester City Football Club )」と「マンチェスター・ユナイテッド( Manchester United Football Club )」って、実在するフットボール・チームだったんだぁと、インターネットで調べて初めて知った。所属チームも知らずに、ベッカム様にキャーキャー言っていた私は、やはりミーハー。デヴィッド・ベッカムの所属するマンチェスター・ユナイテッドは、 1878 年の設立以来、二度の Division1 降格以外は常にプレミアリーグでプレイし、かつ 14 回の優勝を誇る強いチーム。対するマンチェスター・シティは、 1998 〜 1999 年にはDivision2 にまで落ちたことのある、浮き沈みの激しさでサポーターを魅了するチーム。 2001 〜 2002 年のシーズンで Division1 の優勝を勝ち得たマンチェスター・シティは、来季プレミアリーグに昇格する。まぁ、日本でいうなら、ジミーは巨人ファンの多い学校で阪神ファンを主張しすぎたためにイジメられた可哀想な男の子というところだろうか。

 マンチェスター・シティへエールを送るこの映画は、マンチェスター・ユナイテッドのサポーター達には受け入れられたのだろうか。ジミーをイジメる二人組み、ゴードンはデヴィッド・ベッカムに、サイコはロイ・キーンに似させている。それなのに映画の中でマンUのサポーターであるゴードンに「ベッカムはイヤだ」と言わせているあたり、ちょっと嫌味かも。サイコはジミーの味方になるけど、ゴードンは最後まで嫌な奴。ロイ・キーンって、W杯なのにチームをほったらかして帰ってしまうくらいだから、本当にサイコチックなのかなぁ?彼のいるアイルランドチームを見てみたかったから、残念。

 こんな映画を作るくらいだから、シティのサポーターは阪神ファンのように変わった人が多いのかもしれない。イギリスのロック・バンド、オアシスのギャラガー兄弟は大のシティ・サポーターらしい。嘘か本当か知らないけど、レコード会社と契約する時、マンチェスター・ユナイティッドのユニフォームを着た社員に「それを脱がないと契約しない」と言ったエピソードがあるくらいの熱狂振りだ。この映画のサウンド・トラックには収録されていないが、映画のラストシーンで流れたケミカル・ブラザーズの「レット・フォーエヴァー・ビー」は、兄ノエルがヴォーカルをつとめる曲。やはりサポーターとしては、ちょっと出ずにいられなかったのだろうか。ラストの曲だけでなく、この映画を流れるハッピー・マンデイズやザ・シャーラタンズ、ザ・ストーン・ローゼズなどのマンチェスター系の曲もよかった。

 こんなに面白い映画なのに、なんで日本では劇場未公開?フットボール好きでないアメリカ人にはウケない。アメリカでウケなかったから日本では公開されなかったってことかなぁ?

 これよりストーリー。フットボールのおとぎ話をお楽しみください。

 ジミー・グリンブル(ルイス・マッケンジー)は 15 歳のグリーノック校の高校生。フットボール選手を夢見る、すっごくフットボールの上手な…?確かに一人でボールを蹴っているときは、超うまい。しかし、彼には問題があった。人前では動きが固くなってしまって実力が発揮できないのだ。「俺は冷酷な男、連続殺人犯、リーサル・ウェポン、ターミネーター…」と念じて自分を奮い立たせようとするが、ダメ。もうチビりそうになってしまう。ジミーが調べた本によると、運動ニューロンの異常によって起こる“不安症”らしいのだけど。

 誰も住む人のないボロボロのアパートが立ち並ぶ。簡単な塀で街の他の地域から仕切られているその場所は、街の開発区域なのかもしれない。そこの通りでフットボールの練習をするジミー。誰もいないからとてもうまい。アパートの建物の近くに転がったボールをジミーが取りに行くと、アパートの地下には老婆の死体が!驚いたジミーは走り去る。

 ママ(ジーナ・マッキー:『 ノッティングヒルの恋人 (1999) NOTTING HILL 』『 ジャンヌ・ダルク (1999) JOAN OF ARC / THE MESSENGER: THE STORY OF JOAN OF ARC 』『 リトル・ストライカー (2000) THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE 』『 ヤァヤァ・シスターズの聖なる秘密 (2002) DIVINE SECRETS OF THE YA-YA SISTERHOOD 』等)の新しい恋人がやってきた。ハーレー・デイヴィッドソンに乗るカンフーマスター気取りのジョニー・トゥー・ドッグ(ベン・ミラー)は、断然いけ好かない。なんでこんな金髪頭と付き合うんだ?嫌いだと言ってよ。バイクも嫌いだって。ママのことが大好きなジミーは、こんな男にママを取られるのが気に入らない。ジミーのママ、ドナはスレンダーなわりとキレイな女性。こういう悲劇がジミーを襲うのも無理はない。しかし、ママはジミーをとても愛している。ジミーもそのことは分かっている。ジョニーはママを楽しい気分にさせてくれるらしいから、仕方ない。

 学校ではジミーは俗に言うイジメられっ子だ。マンチェスター・シティのサポーターであるジミーは、ユナイティッドのサポーターの多い高校で目の敵にされていた。正門の前で立っている二人の要注意人物の目を盗んで、校内に入らなければならない。一人はサイコ、特A級のイカれた危険な男。ジミーと同じシティのサポーターと思われる生徒に蹴りを入れている。もう一人は、ゴードン・バーリー(ボビー・パワー)。“ゴージャス・ゴードン(すてきなゴードン)”と女子のあこがれの的である奴は、正門前でも彼女といちゃついている。いつもしかめっ面の体育のウィラル先生(ロバート・カーライル:『 トレインスポッティング (1996) TRAINSPOTTING 』『 フル・モンティ (1997) THE FULL MONTY 』『 アンジェラの灰 (1999) ANGELA'S ASHES 』『 007/ワールド・イズ・ノット・イナフ (1999) THE WORLD IS NOT ENOUGH 』『 リトル・ストライカー (2000) THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE 』『 ケミカル51 (2002) THE 51st STATE (原題) / FORMULA 51 (米題) 』等)も、あの二人に何を言われても、何も言わない。全く気が小さいんだから。奴等が先生に気を取られている間に、ジミーはこっそり学校に入ることができた。しかし、一日中奴等に見つからないわけにはいかない。ちょっと変だけどイイ感じの転校生の女の子に微笑みかけられ、心ときめいた瞬間に、ジミーはゴードンに突き飛ばされた。「蹴られてたまるか!」ジミーは猛スピードで逃げる。ジミーは走るのが速い!ゴードンたちも追いついてこられない。でも運が悪いのか、要領が悪いのか、わざわざ行き止まりの所に行ってしまい、捕まってしまう。ジミーのシティのロゴ入りリュックは、公衆トイレと化す。一斉に集団でおしっこをひっかけられた。それしても、なんでわざわざそんなリュックを学校に持って来るんだろう?いじめの対象になるに決まっているのに。それでも持って歩きたいのがファン心理というものなのだろうか?ジミーはお気に入りのそのリュックをシャワー室できれいにする。

 ビショビショのリュックを持ってジミーが廊下を歩いていると、ウィラル先生がスクール杯の選手の選考会を知らせる紙を掲示板に貼っていた。「僕みたいに本番に弱いタイプは、頭を使わないとね」と、ジミーはその張り紙を他の掲示物で隠す。

 選考会が始まる午後4時に校庭にやってきたジミー。やった!僕のほかに誰も来ていない。おっとキャットが来ている。キャットことキャスパー・ヒギンズは機敏なキーパー、でも手癖が悪い。猫のようにバクテンを繰り返し、ゴールにぶら下がるキャットのポケットからは、たくさんのカードが落ちてくる。それにMF<ミッドフィルダー>のエルヴィスもやって来た。1日 40 本のタバコを吸う、キレやすい奴だ。あれあれ、みんな選考会のこと知っているの?ジミーの顔に唾が飛んでくる。掲示板のメモをジミーが隠したことを怒って、ジミーの胸座を掴むゴードン。しかし、ジミーの策略が効を奏したのか、集まったのは 12 人。ジミーも補欠にはなれる。レギュラーも夢じゃない!

 その頃、体育館建設のための会議が開かれていた。資金難に校長先生も頭が痛い。そこへ傍若無人にやってきたのは、ゴードンのお父さんのバーリー氏だ。父親も息子と同じ自己中な奴。大した選手でもなかったのに昔プロのフットボール選手だったことを鼻にかけている。その上、廃品回収の仕事で金持ちとなった彼は、他の先生達のいる前で、学生時代のニックネーム「鼻水」と校長を呼ぶ傲慢さだ。しかし、彼は約束した。もし、スクール杯で自分が進んだのと同じように決勝まで行くことができたら、体育館の建設資金の全額9万ドルを提供すると。その申し出の裏には、ゴードンを何としてもプロフットボール選手にしたいというバーリー氏の夢があった。

 実際ゴードンは性格は悪いがフットボールはうまかった。緊張の余りゴールの前で動けなくなっているジミーの頭にわざとボールを当て、ゴールを決める。そのやり方にノーゴールを宣言したウィラル先生に、ゴードンは食って掛かる。ウィラル先生は「態度が悪いのは外す」と言うが、我侭なゴードンは言うことを聞かない。堪忍袋の緒が切れたウィラル先生は「校長に言う」と校長室へと向かう。しかし、こうなったらゴードンの思うつぼ。校長先生はゴードンのお父さんの言いなりなのだから。

 ママを迎えに職場を訪れたジミーだが、ママは夜勤で働くことになり、先に一人で帰るように言われる。「ナイトアウル・キャブ」という店名から、ママの仕事はタクシーの電話受け付けかなと思われる。ママの上司は、まさに彼女を狙ってるという感じだ。

 一人夜道を帰るジミーが、よく自分がフットボールの練習をする街の開発地区の辺りに差し掛かったとき、その中からゴードンとサイコが出てきた。ヤバイ!逃げなきゃ。思いっきり走るジミーを追うゴードンとサイコ。ジミーは危ないところを老女に助けてもらう。その老女は誰もいないアパートの地下を住処にしているホームレスのようだ。ジミーは彼女にアパートの地下へと導かれる。アパートに入ったジミーを見つけたゴードンとサイコも中に入ってくるが、地下へと通じる秘密の扉の存在に気づかないため、ジミーを見つけられない。ジミーは老女の住まいである地下の怪しげな雰囲気に、「もう帰るよ、ありがとう」とそそくさとそこから出ようとするが、古いフットボールシューズに眼が留まる。それは皮でできたシューズと言うよりはブーツといったアンティークだが、妙にジミーの心を捉えた。老女は「特別な靴」だとジミーにその靴をあげる。こうしてジミーは魔法の靴を手に入れるが、帰り道「魔法の靴?そんな靴ありっこないよ」とゴミ箱に捨ててしまう。ジミーが立ち去るとごみ箱の上の電灯が消える。偶然?それとも魔法?

 アパートの部屋の前には、ママとママの前の恋人のハリーがいる。よりを戻しに来たらしいが、ダメみたい。ハリーはジミーにとって本物の父親のような存在だった。スタジアムにシティの試合を二人で一緒に見に行った。 40 年間欠かさず試合に来ているという盲目の男ボビーからプログラムを買い、階段を上がっていくと目の前に広がるグリーンの芝生に、シティ・カラーのライトブルーの観客席、光るライト。あの感動はいつまでも忘れない。実は、例のシティのリュックはその時にハリーに買ってもらったものだ。ジミーがシティが好きなのは、このハリーとの思い出のせいなのだ。とても優しいハリーだったけど、問題があった。彼は結婚していた。アパートにハリーの奥さんが乗り込んできて、ママと彼の関係は終わってしまった。ママはその時初めてハリーが結婚していたことを知ったようだ。ママも傷ついたけど、ジミーも傷ついた。

 初戦の相手はラフなプレイで有名なレッキンガム校。補欠のジミーが集合場所にやってくると、ゴードンが睨んでいる。何かされる!可哀想に、フェンスに押さえつけられたジミーはリュックからシューズを取られ、ゴミ収集車の中に投げ入れられてしまった。シューズがないと試合に行けない。ジミーはピンときた。昨日の夜おばあさんにもらったあのブーツだ!早く取りに行かないと、ゴミ収集車に回収されてしまう!ジミーは必死で走った。ゴミ箱を漁ってブーツを見つける。早く戻らないと!みんなの乗ったウィラル先生の運転するライトブルーのボロバスは、ゆっくりと出発していた。ジミーはブーツをフロントガラスにぶつけ、バスを止める。そして嬉しそうにブーツを掲げる。よかった、間にあった。

 試合前の控え室、ウィラル先生が選手達にポジションを言い渡すが、またもゴードンは言うことを訊かない。ウィラル先生はエルヴィスをストライカー、ゴードンをMFにしようとしたが、ゴードンは自分はストライカーだと譲らない。「同じ金髪だからといってベッカム<マンUのMF>にするな」というゴードンに、エルヴィスも「おれ、ガスコイン<1990年イタリアW杯でイングランドをベスト4へと導いた。現在はエバートンのMF>」とMFを主張。結局みんなウィラル先生の指示に従わずに、試合へ。

 壊し屋チームレッキンガム校は、やはり噂どおりの物凄さ。審判もレッキンガム校の先生なので、何でもありだ。ウィラル先生は新聞を読んでいて、試合には無関心。試合を眺めるジミーは、補欠で良かったとホッとする。ゴードンがゴールを決めてからは、もっと酷くなる。ラフプレイというよりは、もう殴り合いだ。前半終了後、余りの酷さにウィラル先生は審判に「格闘技の試合か」と抗議するが、「審判はこの私だ。引っ込んでろ」と言われ、本当に引っ込んでしまう。あぁー、度胸がないんだから。

 1対0のワンポイントリードで後半開始。しかし、レッキンガム校の逆襲が始まった。審判は自分のヘディングでゴールしたポイントもレッキンガム校のものにしてしまった。インチキだ!その上、ゴードンが急所をやられ、試合に出られなくなった。もしかして補欠の出番?最悪のデビュー。イカれた連中相手に最終ラインなんて。ジミー・グリンブル、ウンコちびりそう。ボールを追う集団がこっちに向かってくる。ビビって動けないジミーに「止めろ!」と声がかかる。どうしよう、しかしジミーは勇気を出した。「蹴るんだ!」ボールは高くどんどん飛んでいく。そして携帯電話で話しているゴールキーパーの守るゴールに入ってしまった。イエーイ!倒れているジミーのもとにチームの仲間が走り寄ってくる。勝ったぞ!

 ジミーはブーツをくれたおばあさんのところへやってきた。「得点したんだね」と言うおばあさんは謎めいている。「魔法の靴じゃないよね?」と尋ねるジミーにおばあさんは答えないが、そのブーツがかつてのマンチェスター・シティの選手、ロビー・ブルーワーのものだとジミーに教える。ジミーはロビー・ブルーワーという選手のことを調べようと、マンチェスター・シティの歴代選手の名前が載る本を見るが、そんな名前はない。一体ロビー・ブルーワーって、誰?

 しかし、まぁいいことばかりは続かない。ジョニーがジミーたちのアパートに越してきた。それに例のあの転校生の女の子サラ(サーミア・ガーディー)。ジミーは以前サラがゴードンの彼女に因縁を付けられるが、一発食らわすのを目撃した。ジミーと同じようにアウトサイダーなのに、戦う意欲と術を持つ拳闘家の彼女のことが好きになったジミー。フットボールには興味がないサラは、墓地を散策するのが好きな変わった娘。サラもジミーに気があるみたい。二人で話しているところにゴードンとその彼女がやってきた。ジミーは立ち去ろうとするが、気の強いサラは「平気よ」と止まる。「お前らデキてたのか」とゴードンが話しかけてきた。サラは「そうよ」と答えるが、ジミーは返事ができない。「お前がこの女と?チビでドジのくせして」等々ジミーに悪口を言うゴードン。サラは返事をするようにジミーに目配せするが、ジミーは何も言えない。思い切ってサラはゴードンたちの目の前でジミーにキスをする。ジミーは嬉しそうに微笑むが、「お前らマジに付き合ってるのか?みんなが知ったら爆笑だぜ」とゴードンに言われ、サラとの関係を否定して立ち去ってしまう。それ以来、サラとは口もきけない。

 ロビー・ブルーワーの事を調べるために、マン・シティのスタジアムにやってきたジミー。警備員の男性に訊こうとするが、あいにく彼はマンUサポ。しかし、すぐ近くにあるアパートの 70 番の住人がシティに詳しいことを教えてもらう。 70 番の部屋から出てきた住人は何とウィラル先生。部屋の中に入れてもらうと、中はまさにシティ。ジミーはロビー・ブルーワーのことを訊くが、先生も知らなかった。先生のフットボール一色の部屋には、先生の秘密も飾られていた。実はウィラル先生は元シティのストライカーで、一年目に 12 得点、マンU戦でハットトリックを決めたというスゴイ選手だったのだ。プロ選手だったことを話せばみんな言うことを聞くのに。でも何で今は体育の先生なんだろう?沈んだ先生は訳を話さない。「人生フットボールだけじゃない。不満そうだな。人生は成功ばかり?そうじゃない。現実を見れば成功の後には失望が待っている。過去の栄光さ。」そう話す先生の部屋からは、真っ正面にスタジアムの大きな扉があり中の様子がよく見える。ジミーは先生に尋ねる。「スクール杯の決勝はあのスタジアムで?」「 Yeah 」「僕らにも栄光を?」「…」

 次の試合は、一番の強敵、南米スタイルのノースムーア校。オンボロバスで辿り着いたノースムーア校は、伝統的なすごい校舎。格が違うとジミーは意気消沈。校長とバーリー氏が出迎える。ウィラル先生が生徒たちに話そうとすると、校長が「…元プロ選手に戦略を教わるんだ」とバーリー氏に指揮を執らせようとする。またバーリー氏が校長に圧力をかけたにちがいない。本当に物凄い元プロ選手は、ウィラル先生の方なのに。バーリー氏の戦略はとても単純だった。パスは全てゴードンに送る。試合中まるでコーチのように指示をとばすバーリー氏。結果、前半は1点取られてしまった。このままゴードンにパス戦略では負けてしまう。

 ハーフタイムに例の魔法の靴を履いているジミーに、審判のノースムーア校の先生が「ユナイティッド時代、私もそんな靴を」と話しかけてきた。あっ、この人ならウィラル先生を知っているはずだ。ジミーは審判を先生の所へ連れて行く。「彼はシティが生んだ名選手だった」とやっぱりハットトリックを決めた先生のことを覚えていた。出しゃばりなバーリー氏も「私もプロだった」と話に割り込んでこようとするが、所属チームがアレックスということで、鼻であしらわれてしまう。生徒たちの信頼は一気にウィラル先生に集まる。後半のコーチはウィラル先生だ。先生も過去の栄光が認められ、嬉しそう。後半はウィラル先生の的確な指示と、ジミーの大活躍で2得点! Wow ノースムーアに勝った!!

 ノースムーア校のあとは、楽勝の連続。どんどん勝ち進む。ジミーがチームメイトの中に溶け込んでいくにつれて、ゴードンはみんなから離れていった。帰りもバスには乗らず、父親の迎えのレンジ・ローバーに乗って帰る。試合の帰り、ついにボロバスはエンストで止まってしまった。ジミーが魔法の靴をバスにあてて、バスが動くように願っていると、トラックが助けに止まってくれた。それもそのトラックの運転手は、ハリーだ。マン・シティのサポであるハリーはもちろんウィラル先生を覚えていた。帰りに「助かったよ」と握手をする先生に、「あのときの試合を見ていたが、あれは事故さ」とハリーは言う。

 ジミーがハリーのトラックで、迎えにママの勤め先まで行くと、ママは急いで職場から出てきたところだった。ママは上司の男に襲われかけたのだ。ママは迷うことなく昔の男のトラックに乗った。心配したハリーはトラックを降りてアパートの敷地内まで送ってくれた。「会いたかった」とママに言うハリー。そこにちょうどジョニーがやってくる。ジョニーは「今彼女を満足させているのはこのおれだ。結婚する」と元カレのハリーを追い返す。

 もしかしたらママとジョニーが結婚するかもしれない、ロビー・ブルーワーはどこにもいない、サラとは今もレッドカードな関係。そんなジミーの唯一の楽しみは、準決勝戦だ。準決勝でも魔法の靴を履くジミーは大活躍。そんなジミーをマンUのスカウトがチェックしている。試合は2対0で勝利、学校史上二度目の快挙。次はスタジアムでの決勝戦だ。

 この喜びをハリーに告げたくて彼の家を訪れてみたジミー。ハリーは今でもドナが好き、ハリーの妻にもよそに恋人がいた。夫婦関係のどうしようもない終焉に涙を流す妻を慰めるために、ハリーは彼女を抱きしめる。ちょうど窓から二人のそんな姿を見たジミーはトボトボとアパートに帰る。部屋では、ママがセクシーな下着の家庭内販売をしていた。先日の事件で職が無くなってしまい、仕方のないことなのかもしれないが、ジミーはそんなママの姿を見るのがイヤだった。それに自分の部屋にはジョニーがいる。寒い雪の中、ジミーはおばあさんの所へ向かった。ジミーは見つからないロビー・ブルーワーのことをおばあさんに尋ねた。おばあさんが彼にウソをついたことが原因で、ずっと昔に連絡が途絶えているらしい。おばあさんは彼が病気であることを彼のことを思って黙っていた。おばあさんはジミーに言う。「…時と場合によっては本当のことよりウソをつく方がいいこともあるって…」ジミーはよく分からずにうなずいた。そして明日の決勝戦を見に来て欲しいとおばあさんに言う。

 決勝戦の朝、ジミーはいつになく真剣に「愛してるよ」とママに言う。一瞬照れるがママも「愛してるわ」とジミーを見送る。学校でもジミーは思い切ってサラに声をかけてみる。サラは試合の応援に来てくれるそうだ。そしておばあさんの所に行ってみると、アパートはまさに壊されようとしていた。ジミーは「中に人がいる」と叫んで、アパートにぶつけられる大きな鉄の玉をとめようとする。そしておばあさんの部屋に通じている所までやってくると、そこから雪の上に足跡があるのに気づく。その足跡を辿っていくと、凍死した老女の姿があった。思わず手から魔法の靴を落とすジミー。

 決勝戦では、おばあさんの死に落ち込むジミーを陰謀が待ち受けていた。スカウトの注目をゴードンに向けさせるため、バーリー氏の圧力で校長が決勝戦にはジミーを出さないようにとウィラル先生に伝えにやってきた。大人のエゴだとウィラル先生は校長を非難し、ジミーに校長から直に話すように言う。控え室でみんなの前で校長はジミーのベンチ入りを告げる。怒ったサイコがジミーが出ないなら俺も出ないと言い出すと、他のチームメイトも次々に試合に出場しないと立ち上がった。こうなっては仕方がない。校長はバーリー氏に、彼のゴリ押しは通らなかったと告げに行く。そして鼻水とバカにされ続けてきた校長は自分の誇りを取り戻す。「忘れてたよ、これは私の高校だ。あんたの思い通りにはさせない。優勝に比べたら、体育館を建てる金など惜しくない」

 おもしろくないゴードンは、ジミーの魔法の靴をこっそり持ち出し、川に捨ててしまう。ジミーは靴を探すが見つからない。戻ってきたゴードンをウィラル先生は問いつめるが、ゴードンはシラを切る。仕方がない。ジミーは先生にスタジアムの店で新しい靴を買ってもらう。しかし自分の自信の源だった魔法の靴を失ったジミーには、高価なナイキのシューズも意味がない。そこにママがジョニーと別れたと話しに来るが、ジミーは喜べなかった。おばあさん、靴、ハリーをなくし、ロビー・ブルーワーもいない。ジョニーと別れても、また別の男にママを取られてしまう。すっかり自信喪失のジミー。

 ハンティンドン校対グリーノック校。決勝戦開始。観客席にはよりを戻したママとハリーの姿が。しかし、ジミーのパスは全然通らない。ボールは奪われる。何をやってもダメだ。あまりのジミーの調子の悪さに、ウィラル先生も交代の選手の準備をさせる。観客席からも交代を叫ぶ声。前半は2点を奪われる。

 ハーフタイム。ハリーとウィラル先生がジミーを励ます。ウィラル先生はフットボールをやめた理由をジミーに話す。小さな体の先生が大きな男たちと戦うには勇気が必要だった。その勇気を得るために、先生はお酒に頼っていた。そしてある日ある選手にレイトタックルしてしまい、その選手はほとんど歩けなくなってしまった。ピッチで頼れるのは、自分一人だと先生は言う。しかし、ジミーはフットボールだけでなく生きる自信も与えてくれたブーツへの喪失感に押しつぶされていた。魔法の靴なんて思いこみだと言うハリーに、ジミーはあの靴は自分だけでなく彼にとっても特別だと話す。ハリーはその彼の名がロビー・ブルーワーだと知り、それが誰なのかハッとする。急いでジミーをロビー・ブルーワーの元に連れていく。なんとロビー・ブルーワーとは、プログラムを売る盲目の男性ボブ<ボビー>だったのだ。病気で目が見えなくなったボブは、おばあさんの息子だった。ジミーくらいの年頃の時、シティのマスコットをしていたらしい。ストレスで病気が悪化するので、おばあさんはボブに病気のことを内緒にしていた。昔は息子の健康を気遣ってウソをつき、今度はジミーに自信を与えるために魔法の靴だとウソをついたのだ。おばあさんが言ったように、時と場合によっては本当のことよりウソをつく方がいいこともある。魔法の靴でないのなら、今までのことは全部ジミーの実力だ。ジミーは自信を回復する。

 こうなったら、ジミーは絶好調!後半はジミーのシュート、ゴードンのシュートで2点を奪い返す。2対2だ。しかし、試合の残り時間はあと1分。相手ゴール前で、ボールを持つジミー。ゴードンは自分の頭にパスするようにジミーに叫ぶ。「そんなに欲しいなら、やるよ」ジミーはゴードンにパスを送る。ボールはゴードンの顔面を直撃。そして見事シュート!その衝撃にゴードンはぶっ倒れる。やった!いつかの仕返した。3対2、逆転でグリーノック校の優勝が決まる。沸く観客。喜ぶ選手達、そしてウィラル先生。シティのスカウトらしき人が先生に耳打ちする。バーリー親子はマンUのスカウトマンと話をしているが、彼の本命はジミーだ。ちょうどそこにやってきたジミーをユナイティッドに誘うが、ジミーはシティからの誘いがあるからと断る。名門マンUを断るなんて!本当にシティのサポーターには最高のお話。

 「スクール杯優勝、彼女とも仲直り、新しいお父さんまでできた、こんなのまるで、おとぎ話みたい?先生も僕もいい勉強したかな。人生フットボールだけじゃない。なんてね。」

 おばあさんは幽霊だったわけだけど、そのことに気付かない方が、ジミーの精神状態にとっていい。

 弱者への温かさを感じる映画でもあった。イジメられっ子ジミーを取り巻く人々は、社会の王道を行く人ではない。好きな女の子のサラはちょっと有色人種系だし、ウィラル先生はプロフットボールの世界での失敗者、校長は元イジメられっ子、もちろんジミーもそのうちの一人だ。好きなチームだって名門マンUでなくマン・シティ。趣味自体も王道でない。ウィラル先生が言っていたように、小さい体で大きな体の人と戦うには、勇気が必要だ。その勇気、自信を持つ事で、人生が変わってくる。映画はそう伝えているように思うけど、そんな気持ちを持つようになるのは、なかなか難しい。人生、映画のようにはいかないものだ。

(■解説とネタばれ:2002/10/25アップ ◆俳優についてリンク更新:2003/10/02)
以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず11426文字/文責:幸田幸
参考資料:「 THERE'S ONLY ONE JIMMY GRIMBLE 」英語版オフィシャルサイト
       allcinema ONLINE
       Soccer Age Asia
       World In Motion Manchester City
       MSNスポーツ
       Robert Carlyle OBE as…
coda_sati@hotmail.com
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