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 シャイな幸の独り言
ラストサムライ ロスト・イン・トランスレーション MON-ZEN もんぜん
異文化コミュニケーション映画
2004年02月08日日曜日 「シャイな幸の独り言」トップへ
 『 ロスト・イン・トランスレーション (原題) (2003) LOST IN TRANSLATION 』と『 ラスト サムライ (2003) THE LAST SAMURAI 』と『 MON−ZEN [もんぜん] (1999) ERLEUCHTUNG GARANTIERT (原題) / ENLIGHTENMENT GUARANTEED (英題) 』には共通項がある。それは日本を題材にしていることだ。そして、主人公は自国からそれぞれの理由ではるばる日本へやってくる。

 ロスト・イン・トランスレーション (原題) (2003) LOST IN TRANSLATIONは映画としては華々しい栄誉に溢れている作品だ。先日1月25日午後(日本時間26日午前)に開かれた第61回ゴールデン・グローブ賞 Golden Globe Awardsでミュージカル・コメディ部門の作品賞、ソフィア・コッポラ監督が脚本賞、ビル・マーレイがミュージカル・コメディ部門の主演男優賞を受賞した。また、第76回アカデミー賞 The 76th Annual Academy Awards は、2004年2月29日日曜日に発表される。発表までに選ばれた第76回アカデミー賞ノミネート作品の中でもこの「ロスト・イン・トランスレーション(原題)」がいくつかの候補に挙がっている。「ロスト・イン・トランスレーション(原題)」のビル・マーレイが、Acting in a leading role 主演男優賞、そして「ロスト・イン・トランスレーション(原題)」が、Best Picture 作品賞、Directing 監督賞、Best Original Screenplay オリジナル脚本賞だ。

 同じように、『 ラスト サムライ (2003) THE LAST SAMURAI 』もゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞の各賞に数多くノミネートされている。日本でも渡辺謙が助演男優賞を受賞できるか興味がある。「ラスト サムライ」はハリウッドが製作した、初めて日本のサムライを真正面から描いた作品でもある。日本でも観客動員数9週目にかかってなお第一位である。幸も「シャイな幸の独り言」エッセイで、昨年の8月に「明治維新」というタイトルで「ラスト サムライ」を調査・研究した。

 一方、『 MON−ZEN [もんぜん] (1999) ERLEUCHTUNG GARANTIERT (原題) / ENLIGHTENMENT GUARANTEED (英題) 』という映画は、日本人の殆どの人々に知られていないのではないかと思う。「MON−ZEN [もんぜん]」は、本国ドイツでは多作で人気のある女性監督のドーリス・デリエ監督がデジタル・カメラで撮影したという映画で、映像的には大画面で観るような映画ではないのが物足りない。まあ言ってみれば映画っぽくないけど、しかし、プロットは面白い。おススメ映画かな。
ラストサムライ ロスト・イン・トランスレーション MON-ZEN もんぜん
MON−ZEN [もんぜん]
ERLEUCHTUNG GARANTIERT (原題)
 ENLIGHTENMENT GUARANTEED (英題)

イメージは公式サイトより引用
 「異文化コミュニケーション」というのですか・・・?という駅前留学NOVAのTVコマーシャルで聞きなれたフレーズになった「異文化コミュニケーション」。英語やフランス語やスペイン語や中国語などの外国語を学ぶことは大いに「異文化コミュニケーション」に役立つ。元々「異文化コミュニケーション」は大学などで「国際文化〜論」とかいうような学術的な方面から入っていきそうだが、実際は、海外旅行や映画やスポーツ等で絶えず海外の文化とコミュニケーションを図っているのだ。語学留学したりワーキング・ホリデイで海外に出た途端、私たちは日本の民間外交官になっているのかも知れない。そうすると海外旅行のパッケージツアーや語学留学しても日本人とばかり屯(たむろ)していては「異文化コミュニケーション」に寄与していないことになるのかもしれない。
 今地球は、国家を越えて、地球が一体化していっている。所謂(いわゆる)グローバライゼーション GLOBALIZATION 、グローバル化である。つい最近まで日本は「国際化」と謳い大学や高校まで「〜国際科」とか「国際学科」というようなタイトルの学科を設置した。「国際化」というのは一体どのようなことなのか幸には分らないけれども、「国際」というのだから、国家の存在を前提とした考え方なのだろう。日本の国際化教育では、少なくとも学校のカリキュラムでは「英語」授業を増やしただけで、国際化教育を行なっていることになるのだろうか?

 地球が一つになるグローバライゼーション GLOBALIZATION グローバル化では、英語の授業を増やしたり、英語圏の海外に姉妹校を作るだけの教育では追いつかなくなる。国家を越えて「ヒト」、「モノ」、「マネー(金)」、「情報」の4つのアイテムが激しく移動する社会が既に来ている。
 第一のアイテム「ヒト」の移動とは、幸もよくするように旅行者が先ず思いつく。それに難民、移民そしてヨーロッパに多い季節労働者だ。
 第二のアイテム「モノ」の移動は貿易や個人輸入や密輸だ。
 第三のアイテム「マネー(金)」の移動はニューヨークや東京、ロンドンやシンガポール等の金融市場だ。秒刻みで世界の景気の浮き沈みが記録されていく。また、マフィアやギャング映画でも登場する裏資金の流れやマネー・ロンダリング(資金洗浄)もマネーの移動に貢献している。
 そして第四のアイテム「情報」の移動だ。「情報」のやり取りは目まぐるしい。特にインターネットは、双方向性と草の根情報交換、情報伝播速度と範囲において、従来の情報手段である新聞TV雑誌などのマスメディアのあらゆる常識を打ち破るかも知れない。様々な情報経路を通り、情報そのものの単価が下がり一層情報の移動が多くなっていく。インターネットのほかにも衛星放送、通信衛星、電話なども情報の移動のツールだ。

 そのような現代のグローバル化社会の中で、映画『 MON−ZEN [もんぜん] (1999) ERLEUCHTUNG GARANTIERT (原題) / ENLIGHTENMENT GUARANTEED (英題) 』の位置付けをして観るのも面白い。明治開国以来日本は欧米の文化を率先して受け入れてきた。しかし、日本の宣伝をするのを忘れてきた。新渡戸稲造( 1862-1933 )博士は日本を世界に知らせるために英語で『 Bushido: The Soul of Japan (武士道:日本の魂)』を著し、明治33年( 1900 年)に初版が出版された。以後、多数の言語に翻訳され、現在でも海外で読み継がれている。トム・クルーズも「ラスト サムライ」の撮影に入る前に、本当かどうか知らないけれど、『 Bushido: The Soul of Japan (武士道:日本の魂)』を読んだという。

 幸が高校のとき読んだ日本を紹介した書籍では、アメリカ合衆国が太平洋戦争で敵国日本の文化を知りたいとの米戦時情報局の依頼を受け、文化人類学者ルース・ベネディクト Ruth Fulton Benedict(1887-1948)が行なった研究論『菊と刀』 Chrysanthemum and the Sword: Patterns of Japanese Culture (1946年)が有名である。彼女は、一度も日本に来ないでデータ分析だけで書き上げたらしい。また、幸の父からの情報だが、フランス人記者ロベール・ギラン(1908〜1998年)の『第三の大国・日本』(井上勇訳 朝日新聞社 1969年)/GUILLAIN (Robert).- JAPON, TROISIEME GRAND. Paris, Seuil, 1969 は、日本を分析・予想し日本は第三の大国となる偉大さを世界に知らしめたらしい。当時フランスでは日本の禅や柔道や空手がブームになったらしい。しかし、日本が高度成長を成し遂げる以前は、日本が欧米に対して求めてきた熱心度の百分の一も、欧米が日本に対して注意を払って来なかったのではないかと幸は勝手に思っている。アメリカの百科事典で日本と日本人の項目には、着物を着て丁髷(チョンマゲ)を結った日本人が、神棚を前に、卓袱(ちゃぶ)台を置いてその上にはご飯を山盛りにしたお茶碗があり、白飯の上にお箸を立てている図例があったらしい。これは1970年代の出版物だったというから驚く。

 しかし、現在は日本を取り巻く状況が当時とは大いに異なる。幸がお正月に滞在したロンドンのホテル・ノボテル NOVOTEL WEST にはNHKの海外用の衛星放送がチャンネル8で観られた。イタリアのフィレンツェやローマやミラノでは日本の少し古いアニメが朝から放送されていた。パリのホテルでも同様だった。アニメはアメリカの十八番(おはこ)でディズニーだという既成概念がなくなりつつある。アメリカのアニメは高価だ。しかし、日本のアニメは上質で安価。市場の論理通り日本アニメはヨーロッパを席巻した。当然アニメを通して日本の文化が紹介される。次第に、極端な日本の古い情報は、更新され、現実の日本の姿を映し出してくれるようになる。

 そんな中で、上述の『 ロスト・イン・トランスレーション (原題) (2003) LOST IN TRANSLATION 』と『 ラスト サムライ (2003) THE LAST SAMURAI 』と『 MON−ZEN [もんぜん] (1999) ERLEUCHTUNG GARANTIERT (原題) / ENLIGHTENMENT GUARANTEED (英題) 』の三作に幸は注目した。「ロスト・イン・トランスレーション(原題)」は日本を馬鹿にしたようなシーンがあるらしいが、幸はまだ観ていないのでなんとも言えない。しかし、グローバライゼーション GLOBALIZATION 、グローバル化の話の一例には合っているような臭いがする。日本は歴史的に観て中国に影響され、ヨーロッパ、そしてアメリカのモノマネをしてきた。幸も例に漏れず生活様式は殆どアメリカナイズされている。考え方も民主的自由主義を邁進する日本の学校教育の中で育ったから、自由主義・個人主義こそが普遍的に価値があるという考えだ。今の殆どの日本人は西欧とアメリカの価値観を尊重している。その価値観とは、法治国家の下に民主主義と人権、自由市場、小さな政府、個人主義だ。日本はアメリカをお手本にアメリカのシナリオ通りに上手く演じてこれたように思う。しかし、これからは「ラスト サムライ」や「MON−ZEN [もんぜん]」のように、今まで憧れの対象だった欧米の国々が、積極的に日本の情報を取り入れていることを日本人の大衆のレベルで知らなければならない。日本人はもっと自らの良さを海外に宣伝しなければならないのかもしれない。映画「ラスト サムライ」や「MON−ZEN [もんぜん]」は、日本固有の文化を見直してしっかりと守っていかなければならないことを教えてくれているのかも知れない。

 「ロスト・イン・トランスレーション(原題)」や「ラスト サムライ」や「MON−ZEN [もんぜん]」のような異文化コミュニケーション映画では、外国人(欧米人)向けの異文化ギャップと好奇心から生まれてくる笑い(極端に誇張したり決して馬鹿にしたりしてはいけない)を楽しみたい。また、欧米人の異文化を肯定的に認め吸収しようとする姿勢、時には異文化から積極的に啓蒙を受けるスタンスが読み取れる映画(「ラスト サムライ」や「MON−ZEN [もんぜん]」)が作られ始めたという、一方はアメリカハリウッド、他方はドイツのインディペンデント系の両極端に、日本向きの姿勢を大いに評価したい。その一方で「何が一体武士道じゃ!アメリカが敗戦国日本に武士道を捨てさせて商いの道を歩ませたのとちゃうの?一生懸命頑張ってあちこち頭下げて商い道を精進して貯めたお金を出すだけでなく、今度は血も流せと言うんかいな」と父が愚痴。今度は武士道の国らしく血も流せと言う意味で"Show the Flag."、”Boots On the Ground.”と言ったタイミングがよい故に、アメリカのイラク戦争絡みのプロパガンダ作品だと言われもしている「ラスト サムライ」をもう一度真剣に観てみたい。

 ゴーン〜。ここで読経(どきょう)の声。

 「塵もないのにどうして掃除をするんだ?」
 --掃除によって心を清めることが大切。泥足の猫が掃除したばかりの床を歩いても、それは些細なことで、また、掃除し直せばいいだけのことなのだ。と総持寺の事務総長は仰った。

 ゴーン〜。ここで読経(どきょう)の声。

 「幾ら恨んでも恨み足りない」
 --寝食を断って、とことん恨みなさい。そうすれば、恨みは自ずから消え、恨みからは何も生まれないことが分かる。と総持寺の事務総長は仰った。

 ゴーン〜。ここで読経(どきょう)の声。

 
参考資料:「MON−ZEN [もんぜん]」日本語公式サイト
  allcinema ONLINE
  IMDb
  The Nostalgia Factory(本ページヘッダーのイメージは以下から引用)
    http://www.nostalgia.com/
  大辞林
  大本山総持寺祖院
    http://w2252.nsk.ne.jp/~notosoin/index.html
  曹洞宗大本山總持寺
    http://sojiji.jp/index.html
Text by Sati
coda21「映画の森てんこ森」幸田幸。
coda_sati@hotmail.com
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