靴に恋して
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 靴に恋して@映画の森てんこ森(シャイな幸の独り言)
靴に恋して
「靴に恋して」を観て、「自分らしく生きる」って?
2004年09月25日土曜日 「シャイな幸の独り言」トップへ
 エレファント・ピクチャー配給の映画『 靴に恋して (2002) PIEDRAS (原題) / STONES (英題) 』は、来月10月02日から公開だ。映画『 靴に恋して 』は五人の女性を別々のヒロインに据えて、人生のやり直しを考えさせる五つの物語。『 靴に恋して 』は『 マグノリア (1999) MAGNOLIA 』と『 8人の女たち (2002) 8 FEMMES (原題) / 8 WOMEN (英題) 』をミックスしたようなスペイン版で、ラモン・サラサールの監督・脚本作品である。

靴に恋して
靴に恋して
 私は、映画『 靴に恋して 』は、2004年7月中旬に観たが、実際のところ映画『 靴に恋して 』から私へのメッセージは重かった。そしてそれは、私に「自分らしく生きる」ってどんなことか考えさせたからだ。映画『 靴に恋して 』には、人生に悩む女性たちの精一杯の生き様が、それぞれの偶然かつ必然の織り成す結び目でタピストリーのように編みこまれ映画が成り立っている。彼女たちは理想の男性とのめぐり合いや自らの生き方を求めて、人生のリセットを考えている。
 最近、「人生のリセット」的発想や提案の文章や広告を目にすることが多くなった。私の人生は『 靴に恋して 』の5人のどの女性にも当てはまらないが、今勤めている会社を辞めて、自分のやりたいことをやろうかなと思うことがよくある。

やさしい嘘
やさしい嘘
 先日来日した、映画『 やさしい嘘 (2003) DEPUIS QU'OTAR EST PARTI (原題) / SINCE OTAR LEFT (英題) 』の白髪の主役エカのエステール・ゴランタン Esther Gorintin さんは現在 91 歳のヨーロッパ最年長の女優だ。彼女はユダヤ系ポーランド人として生まれ、第二次世界大戦ではドイツ・ナチスのユダヤ人収容所に入れられるなどの苦労を乗り越え、戦後はパリで歯科医を開業した。 85 歳の時、映画出演者を募集する張り紙を見て触発されて、オーディションに応募し合格。若い時からの夢を実現して、遅咲きながらも女優エステール・ゴランタンの人生を歩み始めた。そして、昨年 90 歳になってから映画『 やさしい嘘 』で初の主演を果たし、昨年のカンヌ映画祭で国際批評家週間大賞を受賞した。彼女の人生は、私たちのような一般的ではないが、若い頃の夢を持ち続けていることが素晴しい。

 映画『 靴に恋して 』を観て、映画『 やさしい嘘 』のエステール・ゴランタンの人生を知って、「女性の幸せ」って何だろう?「自分らしく生きる」ってどんなことだろう?って考えてしまった。恋愛、仕事、結婚、子育て、家庭、老後、夢。幸せな人生の選択肢はいくつもあるだろう。

 私の母は仕事を持っている主婦、姉は専業主婦だ。二人の人生を冷静に観察していくと、どちらもパートナーである男性の存在が大きい。実際のところ今は夫なくしてやっていけない立場にある女性である。すなわち、家庭の分業がしっかりと確立している家庭である。特に姉の家庭は、男性が一家の稼ぎ手で妻子を養い、女性は家庭中心という、「男性世帯主・片稼ぎ」という日本の従来の代表的家庭だ。母姉、どちらも自分が幸せだと思っている?と私は思う(改まって問い質したことはないが)。
 もし、彼女たちが今の自分の人生に疑問を抱き「人生をリセット」するなら、どうなるのだろう?結婚が前提になっている人生なので、結婚していなければ今はない。いま不満がなくても将来の不安はあるだろう。例えば、あってはならないしあってもらいたくない事だが、今の夫と離婚や死別した場合、どう自分の人生を設計できるのだろうか?

 人生80年時代(※)という長い人生において、概して男性のライフスタイルは、学校を出て就職して、結婚、定年まで勤め上げて退職して、年金生活というパターンだと思うが、その点女性はかなりフレキシブルだ。男性の社会的立場と女性から見た結婚相手として、正社員であることが求められる一方、女性の企業での就職の仕方も、正社員、パート、派遣とさまざまだ。女性には、仕事を持つ人、持たない人、結婚して仕事をやめる人、やめない人、出産して退職する人、子育てをしながら再就職する人、子離れしてから地域活動する人、専門学校や大学で学び直す人、家庭と地域で得た能力を生かして起業する人、再婚して事業を始める人など様々だ。

 この低迷している日本では、最近では、男性も女性のような多様なライフスタイルが求められているのかも知れない。リストラや会社合併や会社自体が潰れてしまい職を失うことが日常的に起こる時代の男性のライフスタイルは変わらざるを得なくなって来ている。年功序列・終身雇用は崩れ、実力・能力主義の雇用制度に移行していく中で、転職・脱サラ起業・パート就業も意識に中に組み込んで日頃から知識や技術を身に付けて生きなくてはならない。女性も専業主婦だけで男性に頼って生きることが難しくなり、家族を養うことが男性一人では支えられなくなって来ていることを知らなくてはならない。

 女性が、所謂(いわゆる)結婚適齢期に結婚して子供を一人乃至(ないし)二人生むという常識的人生パターンも説得力がなくなってきている。離婚率が上昇している一方で結婚しない女性も少なくない。女性の人生への意識の高まりと生活設計への不安とが相俟(あいま)って、「人生のリセット」「自分らしく生きる」という言葉が息づいているのかもしれない。

 映画『 マゴニア (2001) MAGONIA 』の第三話(ポスターにもなっている)「嵐の港で、恋人を待つ女 愛の幻想」のような人生は悲しい。映画『 靴に恋して (2002) PIEDRAS (原題) / STONES (英題) 』で、10年前に死別した夫の後を継いでタクシー運転手を続けるマリカルメンも辛くて寂しい。そしてイザベル。彼女は高級官僚の妻だが、夫婦には子供がいなくて冷め切っていて、靴を収集している、そして離婚を決意するイサベルの将来は見えない。また、高級靴店の店員レイレ。好きな彼氏と別れ、夢であるデザインの道を歩むためスペインからポルトガルへと希望を繋ぐレイレは輝いているように見える。

 人生のどこかで、果たせるにしろ果たせないにしろ、夢を持ち続けて、自分らしく生きることが一番幸せで素晴しいことなのかもしれない...ナ。
 どう考えても、結論など出ない人生は、自分で思い込んで納得して生きることなのかもしれない...ナ。


※厚生労働省発表の平成14年簡易生命表によると、厚生労働省が発表した2002年の日本人の平均寿命は、男性が78.32年(歳)、女性が85.23年で、世界的に見ると男性は2位、女性は1位という長寿国。この平均寿命というのは「実際にその年に亡くなった人の年齢の平均」ではない。平均余命という数値によるもの。

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
      映画『 靴に恋して 』の公式サイト
       http://www.elephant-picture.jp/kutsunikoishite/
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      http://www.cinemovies.fr
      厚生労働省発表の平成14年簡易生命表
※トップのタイトル画像は、「靴に恋して」の公式サイトより引用、使用許可申請中。     
Text by Sati
coda21「映画の森てんこ森」幸田幸。
coda_sati@hotmail.com
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