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エリン・ブロコビッチ ERIN BROCKOVICH 【解説】 監督スティーヴン・ソダーバーグはこの映画でアカデミー監督賞候補、 01 年には大スター勢ぞろいの「オーシャンズ 11 」で話題をさらう。主演ジュリア・ロバーツは「エリン〜」で 2000 年アカデミー主演女優賞・LA批評家協会賞女優賞・ゴールデングローブ女優賞の各賞総なめ、ゴールデングローブでは 90 年「プリティ・ウーマン」女優賞・ 89 年「マグノリアの花たち」助演女優賞。「オーシャンズ 11 」「ザ・メキシカン」でブラピ等と共演。これまでの彼女の出演映画は世界中で 20 億ドル以上の売上達成。 助演アルバート・フィニーはロンドンの名門、王立演劇アカデミー出身で名優ピーター・オトゥールは同級生。「トム・ジョーンズの華麗な冒険」「オリエント急行殺人事件」ポアロ役、「ミラーズ・クロッシング」マフィアのボス役等、貫禄十分。 学歴もないお金もないシングルマザーが、巨大企業を相手に、全米史上最高額の和解金3億3千3百万ドルを勝ち取ったという実話のヒューマン・ドラマ。 |
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【スタッフとキャスト】 監督: スティーヴン・ソダーバーグ Steven Soderbergh 製作: ダニー・デヴィート Danny DeVito マイケル・シャンバーグ Michael Shamberg ステイシー・シェア Stacey Sher 脚本: スザンナ・グラント Susannah Grant 撮影: エド・ラッハマン Ed Lachman 音楽: トーマス・ニューマン Thomas Newman 出演: ジュリア・ロバーツ Julia Roberts アルバート・フィニー Albert Finney アーロン・エッカート Aaron Eckhart マージ・ヘルゲンバーガー Marg Helgenberger チェリー・ジョーンズ Cherry Jones ピーター・コヨーテ Peter Coyote ヴィエンヌ・コックス Veanne Cox スコッティ・リーヴェンワース Scotty Leavenworth <もっと詳しく> この映画の企画のいきさつはこうだ。製作総指揮のカーラ・サントス・シャンバーグがカイロプラクティックスに治療にいっている時にある患者のことを知った。エリン・ブロコビッチ・エリスという女性で、二回の結婚、離婚を経て、子供が三人いて、教養も学歴もなく、貧しい暮らしをしていたが、資産 300 億ドルの巨大企業への史上最大級の集団訴訟に勝利したという興味深い話だ。 彼女はひざ上 20 センチのミニスカートに胸の大きく開いた服、 7.5 センチのピン・ヒールを履いた、見るからにイケイケ女性。ミス・ウィチタ(ウィチタはアメリカはカンザス州の町)になった経歴のある、派手な美人。ソダーバーグ監督は、この本物のエリンが、この役に選んだジュリア・ロバーツと大変似ているのに驚いたという。「エネルギーを持ち、内在するカリスマ性や目の輝きが非常に似ていて思わず釣り込まれそうだった。」と言っている。こうして映画の制作に入り、本物のエリンはこの映画でレストランのウェートレス役に本当に出ているのだ! エリン・ブロコビッチ(ジュリア・ロバーツ)はカリフォルニア州モハベ砂漠にある小さな町の三人の子持ちのシングルマザー。ろくでもない男と2度結婚しては離婚する羽目になって、職もなく、お金もなく、生活が大変だ。8歳のマシュ−(スコッティ・レブンワース)、6歳のケイティ(ジェミーン・デ・ラ・ペニャ)、8ヶ月のベスを抱え、就職しようにも、学歴がないし、言葉遣いにも教養がないことが現れてしまい、なかなか職場が見つからない。そんな中で取り柄といえば、元ミス・ウィチタという抜群の容姿。 職場捜しの最中、街角でちょっとした交通事故に遭い、裁判になるが、相手が悪いのに和解金をとれない。彼女の雰囲気と言葉遣いが悪くて陪審員の気に入られなかったようだ。生活苦の上に、ダブルパンチ。それで弁護士をしたエド・マズリー(アルバート・フィニー)に文句を言い、エドの法律事務所に事務員として無理やり雇ってもらう。しかし、しっかりした教育も受けていないので、出来る仕事といったらコピーやファイル整理の雑用。でもどうにか職を手に入れたエリンは毎日威勢良く出勤する。それもド派手な格好で出勤するので、同性の同僚達はいぶかしげな視線を投げる。おとなしいタイプの所長のエドも、その挑発的な服装には閉口するが、エリンは平気。 ある日、いつものように単調なファイル整理をしていると、彼女はある医療記録を偶然見つけた。不動産案件の書類なのに医療記録が含まれているではないか。大手電力・ガス会社のPG&Eが、ロサンゼルス郊外の砂漠の小さな町ヒンクリーに住むドナ・ジェンスン(マージ・ヘルゲンバーガー)の家の土地の買収を狙っているようだ。砂漠の田舎町ヒンクリーでは、PG&Eの工場がクロムを使用しているので、PG&E社がヒンクリーの住民の定期検診を行っていたために医療記録が入っていたのだ。彼女は不思議に思い、重要さがまだ解らなくて上の空の所長エドに許可を貰って、この件を調査する。 エリンは法律事務所を休んで、調査に奔走する。毒物学の教授に話を聞きに行くと、ヒンクリーの地下水から検出された6価クロムが規準を大幅に超えていると教わる。また、水道局に聞きに行ったりもする。こういう場合、エリンは胸のあらわな服で気弱な係員を惑わし、秘密書類を見せてもらうことに成功するのだ。ここでは、PG&Eが安全なクロムではなくて「癌」などの重大な病気を引き起こす有害な6価クロムを使用しているというデータを入手した。この地域の住民間の致命的な病気の原因となる水の汚染の隠蔽工作をPG&E社は行っていたのだ。 子供を抱えながら郊外の砂漠町まで何度も調査に赴けたのは、隣に引っ越してきたバイク野郎のお蔭だった。ジョージ(アーロン・エッカート)という、ハーレー・ダヴィッドソンを乗り回す定職のない独身男だ。「君は僕にとって特別な人だ」と言って、エリンの留守中、三人の子供の面倒を引き受けてくれる。 エリンは調査に打ち込み過ぎて、法律事務所を無断欠勤して首にされてしまった。しかし、ヒンクリーの町の地下水汚染の窮状をエリンから報告を受けた所長のエドは、エリンを再雇用してくれた。しかも昇給もしてくれる。エリンの正義感と情熱に根負けしたわけだ。しかし、訴訟を起こそうとするエリンに、エドは資産 300 億ドルの大企業相手では勝ち目がないと言って弱気だ。 そんな消極的な上司エドを奮い起こし、エリンはヒンクリーの住民問題に必死で関わっていく。脅迫にも屈しない。住民たちは最初は関わり合いになることを嫌がっていたが、エリンは一軒一軒回って、住民と同じ高さの目線で話し、相手から信頼してもらえるようになる。エリンのお高くない姿勢と親身で根気強いアプローチが、住民たちを安心させたのだ。そして、癌になっている人、白血病にかかっている人、体が麻痺している子供、そういう住民たちに、訴訟を起こすように説得して回る。こうやって粘り強く働きかけて、エリンは 600 人以上の原告を集めることができる。 エリンの住民からの信頼度は次のようなエピソードからも垣間見られる。エリンにハッパをかけられてこの問題に足を踏み入れた所長のエドは、軍資金に困って大きな法律事務所からポッター弁護士(ピーター・コヨーテ)と女性のテレサ弁護士(ベネ・コックス)を引き入れた。生活苦の見えない冷たい印象のエリートたちであるから、この二人は、病気を抱えた弱者であるヒンクりーの住民たちの家に行っても、心を開いてもらえない。そして、いわゆるインテリの弁護士なので、法律の知識もなく派手な衣装で言葉の汚いエリンを軽蔑する。二人は、公判だとこの先何年かかるかわからないから、調停にしたほうが現実的だと意見する。エリンは、会議室のテーブルに水を入れたグラスを差し出して、「どうぞ。」と言う。二人が飲もうとするとエリンは「この水はヒンクりーからとってきた水よ。」と言う。ウッという顔をしてグラスを置いてしまう二人。エリンは、汚染で苦しんでいる住民のことを考えたら調停になんか持っていけないわ、という思いを態度で示す。 エリンに意識を高められた住民たちは、陪審員のいない裁判なんて欲していないのだ。住民たちはこの他人行儀な弁護士たちが相手では、調停にしたほうが現実的だという考え方を聞こうとしない。エリンしか信頼しないのだ。エリンの上司のエドは、仕方なくヒンクりーで住民集会を開いて調停を説得する。 その頃、エリンはヒンクリーの酒場で男に声をかけられた。その男は、ヒンクリーの工場で書類を廃棄するよう上から命じられたのだとエリンに伝える。まさに、これこそ、水質汚染の隠蔽工作でPG&E本社とヒンクリー工場が直接つながっているという重大証拠だ! この証拠を入手して、ついに裁判になる。片田舎の名もない住民たちが大企業を訴訟するのだ。実際の裁判はレロイ・A・シモンズ裁判長といって、実際の訴訟手続きと事実の開示の際に裁判官をつとめたそうだ。そして、この訴訟で、エリンたちが思っていたより遥かに大企業の悪のレベルが大きいことが判明して、この判決でこの訴訟を法律システムの更に上の段階に進ませることができた。そして、その結果、巨大企業を相手に、全米史上最高額の和解金3億3千3百万ドルを勝ち取る。 エリン・ブロコビッチは今までの人生で経験しなかった「他人に尊敬してもらう」ことを初めて味わう。中途半端な生き方から生まれ変わって、熱意と不屈の精神と他人への思いやりで、自分自身を見なおし、自分自身が救われたのだ。 以上。 <もっと詳しく>からスペースを含まず3107文字/文責:幸田幸 |
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