息子の部屋
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映画の森てんこ森■映画レヴュー
息子の部屋 (2001)
LA STANZA DEL FIGLIO (原題) / THE SON'S ROOM (英題)
 映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO (原題) / THE SON'S ROOM (英題) 』をレヴュー紹介します。

 映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』を以下に目次別に紹介する。
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』の解説及びポスター、予告編
 ネタばれをお好みでない方はこの解説をご覧下さい。
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』の映画データ
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』の受賞
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』のトリビア
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』のスタッフとキャスト
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』の<もっと詳しく>
 <もっと詳しく>は映画『 息子の部屋 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー(あらすじとネタばれ)です。※ご注意:映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO / THE SON'S ROOM 』の内容やネタばれがお好みでない方は読まないで下さい。
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』の結末
■映画『 息子の部屋 THE SON'S ROOM 』の更新記録

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幸の鑑賞評価: 8つ星 
■映画『 息子の部屋 (2001) THE SON'S ROOM 』の解説及びポスター、予告編
息子の部屋
息子の部屋
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Trailers:
■映画『 息子の部屋 (2001) 』の解説

 映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO (原題) / THE SON'S ROOM (英題) 』は、ナンニ・モレッティ監督の 2001 年カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。 1998 年の同映画祭でグランプリを獲得した、ロベルト・ベニーニ監督のイタリア映画『 ライフ・イズ・ビューティフル (1998) LA VITA E BELLA 』も、映画『 息子の部屋 』と同じように監督が主演男優で、イタリア人家族の悲劇が描かれていたのを思い出した。日頃陽気に映るイタリア人の悲劇は、より胸にしみるのかもしれない。原題も英題も邦題と同じく“息子の部屋”という意味だ。
 映画『 息子の部屋 』の主人公は、小さな北イタリアの街で開業している精神分析医のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)。美しい妻パオラ(ラウラ・モランテ)、ティーンエイジャーの娘イレーネ(ジャスミン・トリンカ)と息子アンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)、毎日のジョギング、安定した仕事…。彼の生活は満ち足りていた。しかし、息子の突然の事故死が、家族の生活を一変させる。
 映画『 息子の部屋 』の挿入歌" By This River "( by ブライアン・イーノ)の優しいメロディがジーンとくる。
●スチルはnostalgia.com、予告編はcinemaclock.comより許諾をえて使用しています。
Filmography links and data courtesy of The Internet Movie Database & Nostalgia.com.
Filmography links and data courtesy of CinemaClock Canada Inc.
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■映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO / THE SON'S ROOM 』の映画データ
 上映時間:99分
 製作国:イタリア
 公開情報:ワーナー
 イタリア初公開年月:2001年3月9日
 日本初公開年月:2002年1月19日
 ジャンル:ドラマ
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■映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO / THE SON'S ROOM 』の受賞
 映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO / THE SON'S ROOM 』は 2001 年カンヌ国際映画祭 Festival de Cannes / Cannes Film Festival で最高賞のパルムドール Palme d'Or / Golden Palm に輝いた。

 因みに、「映画の森てんこ森」内にあるカンヌ国際映画祭パルムドール作品は:
タクシードライバー (1976) TAXI DRIVER
ピアノ・レッスン (1993) THE PIANO
ロゼッタ (1999) ROSETTA
ダンサー・イン・ザ・ダーク (2000) DANCER IN THE DARK
息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO (伊題) / THE SON'S ROOM (英題)
戦場のピアニスト (2002) THE PIANIST
エレファント (2003) ELEPHANT
華氏911 (2004) FAHRENHEIT 9/11 』 (2005/03/13 現在)
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■映画『 息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO / THE SON'S ROOM 』のトリビア
 「映画の森てんこ森」にある『 息子の部屋 』のようなイタリア映画は:
ラ・マスケラ (1988) LA MASCHERA
イル・ポスティーノ (1994) IL POSTINO (原題) / THE POSTMAN (英題)
踊れトスカーナ! (1996) IL CICLONE (原題) / THE CYCLONE (英題)
星降る夜のリストランテ (1998) LA CENA
海の上のピアニスト (1999) THE LEGEND OF 1900
マレーナ (2000) MALENA
ペッピーノの百歩 (2000) I CENTO PASSI (原題) / THE HUNDRED STEPS (英題)
息子の部屋 (2001) LA STANZA DEL FIGLIO (伊題) / THE SON'S ROOM (英題)
フェリーニ 大いなる嘘つき (2001) FELLINI: SONO UN GRAN BUGIARDO (伊題) / JE SUIS UN GRAN MENTEUR (仏題) / I'M A BORN LIAR (英題)
これ以上の幸せはない (2002) LA FELICITA NON COSTA NIENTE (原題) / HAPPINESS COSTS NOTHING (英題)
ピノッキオ (2002) PINOCCHIO
リプリーズ・ゲーム (原題) (2002) RIPLEY'S GAME
ぼくは怖くない (2003) IO NON HO PAURA (原題) / I'M NOT SCARED (英題)
トスカーナの休日 (2003) UNDER THE TUSCAN SUN
愛の神、エロス (2004) EROS
赤いアモーレ (2004) NON TI MUOVERE (原題) / DON'T MOVE (英題) 』等
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【『 息子の部屋 』のスタッフとキャスト】
監督: ナンニ・モレッティ Nanni Moretti
製作: アンジェロ・バルバガッロ Angelo Barbagallo
原案: ナンニ・モレッティ Nanni Moretti
脚本: ハイドラン・シュリーフ Heidrun Schleef
撮影: ジュゼッペ・ランチ Giuseppe Lanci
衣装: マリア・リタ・バルベラ Maria Rita Barbera
編集: エズメラルダ・カラブリア Esmeralda Calabria
音楽: ニコラ・ピオヴァーニ Nicola Piovani

出演: ナンニ・モレッティ Nanni Moretti ジョバンニ
    ラウラ・モランテ Laura Morante パオラ
    ジャスミン・トリンカ Jasmine Trinca イレーネ
    ジュゼッペ・サンフェリーチェ Giuseppe Sanfelice アンドレア
    シルヴィオ・オルランド Silvio Orlando オスカー(患者)
    クラウディア・デラ・セタ Claudia Della Seta ラファエラ(患者)
    ステファノ・アコルシ Stefano Accorsi トマゾ(患者)
    ソフィア・ヴィジリア Sofia Vigliar アリアンナ

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ストーリー展開の前知識やネタばれがお好みでない方は、読まないで下さい。
■『 息子の部屋 』の「テキストによる映画の再現」レヴュー

【息子の部屋 第01段落】  1999 年、北イタリアの小さな街アンコナで、精神分析の診療所を開業しているジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は、毎日の秩序だった生活の中で、経済的にも精神的にも豊かに暮らしていた。そんな彼は、朝のジョギングの帰りに寄ったカフェ近くで、ハーレクリシュナ運動をしている人々に興味を持ち、近づいてみる。インドの民族衣装のようなものを着て、太鼓をたたき、歌を歌っている彼らは、楽しそうである。ハーレクリシュナ運動は、1966年にアメリカで起こったヒンドゥー教の宗教運動で、 60 年代や 70 年代、アメリカやヨーロッパでカウンターカルチャーの若者達の間で流行ったそうだ。精神分析医の自分とは正反対に無秩序の中に存在する彼らとの遭遇は、これからジョバンニを待ち受けている運命を予感させていると思う。

【息子の部屋 第02段落】  自宅に戻り、彼らの歌を口ずさんでいるジョバンニに電話がかかってきた。 15 歳の息子アンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)が学校で問題を起こしたらしい。ジョバンニは学校の校長から呼び出される。校長先生の話によると、アンドレアは友人のルチアーノと一緒に、実験室のアンモナイトの化石を盗んだらしいのだ。アンドレアは容疑を否認しているが、同級生の目撃証言があり、彼は一週間の停学処分になってしまった。

【息子の部屋 第03段落】  ジョバンニの診療室はショッピングモール(?)の二階にあり、自宅と続いている。それは白い壁の清潔な感じの部屋で、患者は青いカウチに寝転ぶか、ジョバンニのデスクを挟んで向かい合って座るかして、精神分析を受けた。アンドレアについての心配事がジョバンニの穏やかな精神状態を脅かしていたが、今日も彼は、不安や神経症に悩まされる患者達の話を聞き、淡々と仕事をこなしていく。

【息子の部屋 第04段落】  彼の患者には、ジョバンニをイラつかせるようなことばかり言ってはストレスを発散させる女性ラファエラ(クラウディア・デラ・セタ)や、自殺願望の男性オスカー(シルヴィオ・オルランド)、少女を暴行してしまうのではという強迫観念を持った男性トマゾ(ステファノ・アコルシ)、いつも自分を責めては絶望的になる男性や、夫に構われないために強迫症に陥っている女性などがいる。ジョバンニは彼らが不安に襲われたときに、平常心が保てるよう、色々な助言を与えていた。ステファノ・アルコシは、『 Un Viaggio chiamato amore 』で 2002 年のヴェネチア国際映画祭の男優賞を受賞している俳優さん。本作では、変態の精神病患者の役だったけど、もしもっと渋い役を演じているのを見れば、きっとお気に入り俳優になるだろうという予感がビビッとある。

【息子の部屋 第05段落】  診療室の続きにある自宅に戻ってきたジョバンニは、仕事中気になって仕方なかったのだろう、電話中の妻パオラ(ラウラ・モランテ)にアンドレアと話したかどうか尋ねる。パオラは母親だからだろうか、息子の言葉を信じているようで、ジョバンニほど過敏になってはいない。夕食のとき、姉のイレーネ(ジャスミン・トリンカ)は、アンドレアの一件でちょっと落ち込んでいる父親の気持ちを晴らすように振舞う。イレーネは、わりと裕福な家庭で、夫婦仲のいい、知的な両親にバランスよく育てられていることもあって、いい娘だ。ジョバンニの影響だろうか、子供達はスポーツに親しんでいる。特に姉のイレーネはバスケットボールに打ち込んでいる。それにしてもイタリアの家庭料理が美味しそうである。

【息子の部屋 第06段落】  ジョバンニは事の真相を知るために、アンドレアとルチアーノが盗んだと証言している同級生フィリッポの家をアンドレアと一緒に訪ねる。車を運転するジョバンニは、フィリッポとルチアーノが住む集合住宅(?)を見て、「妙な家が多い、僕の知人は住んでいないな」とアンドレアに呟く。裕福な家庭の息子がグレるという設定の日本のテレビドラマなんかでは、父親が息子の友達を貶(おとし)めたり、自分の保身を図るような発言をすれば、息子はより反発してとんでもない方向に行っちゃったりするものだけど、アンドレアは心の中で父親に反発しているのだろうか、そのことに対して何も言わない。

【息子の部屋 第07段落】  フィリッポの家には、フィリッポと彼の両親、ルチアーノと彼の父親、そしてジョバンニとアンドレアが集まった。フィリッポの話を聞いていくと、彼は実際にアンモナイトの化石を見たわけではなく、状況からアンドレアとルチアーノが盗んだと思っていることがわかった。それを聞いてちょっとホッとしたジョバンニはアンドレアを見た。しかし、アンドレアはどこか違う。ジョバンニは真相を知るどころか、事件が藪の中になってしまったと感じる。息子の真実を知りたいジョバンニは、アンドレアの部屋に入ってみるが、何も分かるはずがない。

【息子の部屋 第08段落】  しかし、まだまだジョバンニの生活は以前と同じように順調だ。娘のイレーネが家で恋人のマッテオと一緒に古典の勉強をしているのを、パオラと一緒に隣の部屋で聞いているジョバンニは、まさに娘を持つ父親の心境。マッテオが帰ると、パパのほうが古典に詳しいんだぞと言わんばかりにパオラと一緒にイレーネに勉強を教える。三人はとても楽しそうだ。そしてその夜は、夫婦仲も万全である。

【息子の部屋 第09段落】  アンドレアのテニスの試合に出かける一家。車の運転をしながら上機嫌のジョバンニはラジオの曲に合わせて歌を歌う。少し調子はずれな歌に、助手席のパオラは「仕方ないわね」といった表情。しかし、後部座席の子供達が一緒に歌うと、パオラもつられたように歌い始める。睦まじい家族を描いたこのシーンに、昔私も子供の頃は同じようなことをしたなぁと懐かしい気持ちでいっぱいになった。誰もがこのシーンに共感するだろうと思う。

【息子の部屋 第10段落】  しかし、そんな上機嫌は、アンドレアが試合に負けてしまったことで吹っ飛んでしまった。ジョバンニは試合に負けたことを残念がっているのではなく、アンドレアに勝つ気がなかったことを驚き、不思議に思っているのだ。「勝たなきゃ、つまらないだろ?」と訊くジョバンニに、アンドレアは「いいや」と平然と答える。

【息子の部屋 第11段落】  息子のそんな気持ちを精神分析できない分析医の父ジョバンニは、納得できない気持ちを妻に相談するために、彼女の仕事場を訪ねた。パオラは美術関係の仕事をしているみたい。別の日、ジョバンニは息子ともっと接しなければと思ったのか、二人で外出をした。

【息子の部屋 第12段落】  台所で料理をしているパオラのところに、アンドレアがやって来た。彼は自分の罪を母親に告白した。アンドレアはちょっといたずらをしたかっただけとすまなそうに話す。すぐに化石を元の場所に戻そうとしたが、落として割ってしまったらしい。ジョバンニと外出した時に、このことを話そうとしたが、父が楽しそうだったから言えなかった、とアンドレアは話す。パオラはうなだれる息子の頭を抱く。

【息子の部屋 第13段落】  日曜日、アンドレアには友達とスキューバダイビングの約束があったが、ジョバンニがしつこくアンドレアをジョギングに誘ったので、父と一緒に出かけることにした。ところが、自殺願望の患者オスカーから急に往診を頼む電話が入ってきてしまった。ジョバンニはすぐに息子との約束を反故(ほご)にしなければならなかった。

【息子の部屋 第14段落】  ダイビング用のウェアを着たアンドレアは、ゴムボートで海に繰り出した。その時、パオラは蚤の市に買い物に出かけ、ジョバンニはオスカーの往診をしていた。オスカーはX線検査で自分が肺ガンであるかもしれないことが分かったと告げた。自殺願望のオスカーだったのに、本当に死ぬとなってビビッたのだろう。

【息子の部屋 第15段落】  ジョバンニが家の近くの道路に駐車しようとしたとき、ルチアーノのお父さんが来ているのに気付いた。何だか表情がおかしい。ルチアーノも下を向いたまま泣いている。何かを感じたジョバンニは、「アンドレアに何があった?」と大声で尋ねる。

【息子の部屋 第16段落】  ジョバンニは悲しい知らせを、バスケの試合中のイレーネに伝えに言った。ボールをドリブル中のイレーネは、涙顔の父を見て、立ち止まってしまう。その隙にすぐにボールは奪われた。

【息子の部屋 第17段落】  遺された家族三人は、ただただ抱き合って泣く。遺体を引き取りに来た病院で、ジョバンニは誰かに電話をかけ、アンドレアの死を伝えるメッセージを留守電に残そうとするが、"アンドレアが死んだ"という言葉を言うことができず、泣いてしまう。

【息子の部屋 第18段落】  イタリアのお葬式(?)というものがちょっと垣間見られる。当たり前だけど、日本のような桐の棺ではなく、ドラキュラの棺みたいな形をしたものだ。ジョバンニは、葬儀屋から見せられたカタログでどれがいいかを選んでいた。マッテオが持ってきたアンドレアのジーンズを葬儀屋の人に渡していたから、棺の中での服装は何でもいいみたいだ。ちょっとビックリしたのは、棺を閉めるとき。まず金属の蓋をし、溶接して開かないようにする。その上から木の蓋をして、電動ドライバーでネジを締めていくのだ。これでもかって感じで棺に遺体を閉じ込めるんだなぁ。万が一、棺の中で息を吹き返すようなことがあっても、これでは絶対出て来られない。

【息子の部屋 第19段落】  その夜、棺を閉めるドライバーの音が頭から離れないジョバンニは、夜のカーニバルに出かけた。やっぱり電動ドライバーは、キツイと思うな。パオラは寝室で号泣。翌朝、台所に現れない両親を心配して、イレーネは簡単な朝食を作る。しかし、二人とも食卓にやって来ない。パオラは寝室、ジョバンニは診療室に入ったままだ。イレーネも食べる気がしないので、自室に戻る。深い悲しみは共有できない。アンドレアの死の持つ意味があまりにも大きすぎて、自分の悲しみだけで精一杯になってしまい、家庭に不協和音が生じていく。

【息子の部屋 第20段落】  何度も何度も同じ音楽の一部分を聴くジョバンニ。この音楽のように、あの日曜日の朝を何度もやり直すことができればいいのに。往診に行かず、二人でジョギングに行っていれば…。ジョギングをしていれば、スキューバダイビングの約束を止めさせることができたかもしれない。ジョバンニは、あの日着ていた赤いトレーナーのアンドレアと一緒に街の中を走っているのを想像する。

【息子の部屋 第21段落】  アンドレアのお葬式は、イレーネの提案でミサという形ですることになった。そのほうが悲しくないからだというが、キリスト教に詳しくない私には、何故だかわからない。ミサとは、「ローマ・カトリック教会で、神をたたえ、キリストによる救いを記念して賛美と感謝をささげ、聖体拝領を行う典礼」(新辞林)のことらしいのだけど。ミサのメインが神への賛美と感謝の聖体拝領だから、その分アンドレアの死と向き合わずに済むので、悲しさが軽減されるということなのだろうか。

【息子の部屋 第22段落】  ミサでの「いつ泥棒が入って来るのが分かれば、盗まれはしない」という神父の言葉に、ジョバンニはやりきれない思いを感じていた。イラつくジョバンニは、「(その言葉に)何の意味がある?」と台所でパオラにあたった。完全なものなど何もないと言いたげに、欠けている食器を指摘する。

【息子の部屋 第23段落】  ジョバンニは以前のような穏やかな精神状態で精神分析を行えなくなっていた。心に深い傷を負ったジョバンニは、患者達と差がなくなってしまった。彼らの言葉が胸に深く突き刺さるのだ。特に往診に行ったオスカーに対しては、普通に接することができない。気まずい雰囲気が流れてしまう。肺ガンを気に病んでいるオスカーには、患者の精神的姿勢が重病治療の根本だという励ましの言葉が必要なのに、ある日ジョバンニはひどいことを言う。いくら患者が治癒を願っても、治るものは治るし、治らないものは治らないと話したのだ。自分の発言に後悔したジョバンニは、友人の分析医に相談する。その分析医はオスカーに心境を話すべきだとアドバイスするが、ジョバンニはそれを拒否した。ナンニ・モレッティ監督自身、ガンとの闘病経験があるらしく、もしかしたらそれは彼自身の言葉かもしれない。 1994 年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『 親愛なる日記 (1993) CARO DIARIO 』は、監督自らの闘病生活を題材にしたものだそうだ。

【息子の部屋 第24段落】  家族の誰もが、アンドレアの死を認めたくない気持ちを引きずっている。バスケの試合で退場になったり、マッテオと別れたり、母と行った服屋の試着室で一人涙を流したりと、イレーネも情緒不安定。パオラはアンドレアのカノジョから送られてきた突然の手紙に、少し慰めを見出す。自分の知らない息子の一面に、パオラの想像は膨らんだ。アンドレアの部屋に入ったパオラは、タンスの中にある、あの日の赤いトレーナーを掴んで泣く。夏のキャンプで一日だけ出会ったアリアンナ(ソフィア・ヴィジリア)というその女の子は、もちろんアンドレアの死を知らない。電話で知らせてあげようとするパオラに、ジョバンニは手紙のほうが事実を伝えるショックが少なくていいと言う。手紙を書くのを請け負ったジョバンニだが、一向に筆は進まなかった。

【息子の部屋 第25段落】  ある晩、友人宅での食事で、パオラはアンドレアに送られてきたラブレターの話を自分勝手にし始めた。友人夫婦はパオラの心のショックを思うと何も言えず黙ってしまう。そんなパオラに話を止めさせるためだろう、ジョバンニは彼女の手を握った。家に戻ってきたとき、パオラはなぜ話の邪魔をしたのかとジョバンニに怒った。また、別の日にジョバンニからまだアリアンナに手紙を書いていないことや、日曜日に往診に行かなければよかったという後悔を聞かされたパオラは、「自分のことしか考えないのね。言い訳はよして、聞きたくないわ。」とキツク言った。ジョバンニは、一人ソファで寝るようになった。

【息子の部屋 第26段落】  翌朝、パオラはアリアンナに電話をかけた。アンドレアの死を伝えるが、胸が詰まってくる。そんな彼女をジョバンニとイレーネが支える。パオラはアリアンナに「私達はあなたに会いたい」と話した。

【息子の部屋 第27段落】  気まずい診療が続きすぎた。オスカーがジョバンニの診療を止めることになった。結局ジョバンニは自分の心境を彼に伝えることはしなかった。このことがきっかけになったのだろう、ジョバンニは精神分析をやめることにした。彼は寝室でその決意をパオラに伝え、また、「僕達はどうする?ダメかい?」と尋ねた。パオラは結論を言わなかった。

【息子の部屋 第28段落】  ジョバンニは患者に診療を止めることを伝えていった。先生が再開されるまで待ちますと言ってくれる患者も、トマゾのように暴れる患者も、ジョバンニの精神分析を受けることができなくなるのを悲しんだ。

【息子の部屋 第29段落】  ジョバンニはCDを買いに行った。店主に息子の友達にプレゼントしたいと伝え、適当なCDを選んでもらった。ジョバンニが本当は息子へのプレゼントであることを教えると、店主はすすんで視聴させてくれた。彼が選んだのはブラアン・イーノのCD。" By This River "[アルバム『 Before and After Science 』( 1977 )に収録]が流れる。

Here we are
Stuck by this river,
You and I
Underneath a sky that's ever falling down, down, down
Ever falling down.

Through the day
As if on an ocean
Waiting here,
Always failing to remember why we came, came, came:
I wonder why we came

You talk to me
as if from a distance
And I reply
With impressions chosen from another time, time, time,
From another time.・・・

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◆ここからは、結末まで書いていますので、ストーリー全体が分ります。御注意下さい。
 ATTN: This review reveals the movie content. Please don't say that I didn't say !


【息子の部屋 第30段落】  その夜、突然アリアンナがやって来た。ジョバンニは戸惑うが、彼女を部屋に入れ、ジュースを出す。そんなジョバンニに、アリアンナはアンドレアから自分の部屋を見せたいと送られてきた写真を見せる。その写真の中の生き生きとしたアンドレアを見て、ジョバンニは目頭を押さえずにいられない。パオラとイレーネが買い物から帰ってきた。アリアンナがやって来たことを知って、パオラは一瞬会うことをためらったが、勇気を出す。アリアンナの来訪を喜ぶ家族は、泊まっていくように勧めるが、実は彼女には連れがあった。彼女は友達(彼氏)のステファノとフランスまでのヒッチハイク旅行の途中だったのだ。(高校生でヒッチハイク旅行だなんて、スゴイ!)

【息子の部屋 第31段落】  ジョバンニたちは、アリアンナとステファノを高速道路のインターチェンジまで送っていくことにした。後部座席にはステファノ、アリアンナ、イレーネ、助手席にはパオラ、運転はもちろんジョバンニがする。死んだ息子の元カノジョにはもう新しい恋人ができている。ジョバンニもパオラもなんだか釈然としないのに、インターチェンジで降ろした二人がバスを待ち続けているのを見て、ジェノバの出口まで送ってあげることにした。ジョバンニは車中でちょっぴり嫌味を言うが、若い二人には通用しない。しかし、運転をしながら後部座席の二人がぐっすり眠っているのを見て、ジョバンニの心には変化が現れてきた。車はジェノバを通り過ぎた。そのことに気付いたパオラに、「ここで降ろす約束だが、二人ともよく寝ている」とジョバンニは答える。「君は眠るなよ」とジョバンニはパオラに言う。ジョバンニの深夜の運転は続く。

【息子の部屋 第32段落】  トンネルを抜けるとそこはフランス国境だった。もうすっかり朝だ。これはジョバンニたち家族の心境を表したシーンだろう。アンドレアの死から暗いトンネルの中にいるような感覚だったが、今そこから抜け出すことができた。車を停め、海の方へと歩いていくジョバンニとパオラ。目覚めたイレーネは見覚えのないところに驚き、両親に今日は失格後の初めての試合があるのにと怒る。そんな彼女を見て、ジョバンニが笑い、パオラが笑い、そしてイレーネも笑った。徐々に昔、車で歌った頃の家族の感覚を取り戻しつつあるようだ。

【息子の部屋 第33段落】  海辺のレストランで朝食をとった家族とアリアンナ達。ジョバンニはパオラにアリアンナとステファノが付き合っているのかどうか尋ねる。しかし、パオラが答えようとすると、ジョバンニは何も言うなと彼女の言葉をさえぎるのだった。アリアンナとステファノをバスに乗せて見送った家族は、それぞれの方向で海辺を歩くのだった。家族はアンドレアの死に折り合いをつけつつあるが、悲しみをそれぞれに背負ってしまった今は、もう嘗ての家族ではない。しかし、アリアンナにもう彼氏がいるように、悲しみという感情も無常に帰する。家族はアンドレアを失った悲しみを忘れることはないが、いつか彼らに死が訪れれば、それは無かったことと同じになる。最初のハーレクリシュナ運動に感動するジョバンニの姿は、ガンという大病を患い、悟ってしまった監督自身の姿でもあるのではないかと思った。

【息子の部屋 第34段落】  息子が死んでしまう映画では、『 イン・ザ・ベッドルーム (2001) IN THE BEDROOM 』を観たが、やはり先に子供を亡くすというのは、人生で一番辛いことなのではと思った。『イン・ザ・ベッドルーム』の場合は殺人事件だったから、両親は復讐することに一時期燃えることができた。しかし、根本の悲しみは癒されることがない。

【息子の部屋 第35段落】  精神分析医が主人公である映画では、以前にジャン=ジャック・ベネックス監督の『 青い夢の女 (2000) MORTAL TRANSFER 』を観たが、本当に大変なお仕事だと思う。自分の悩み事だけで精一杯なのに、どうして大勢の他人の悩み事を聞いていけるのだろうか。『青い夢の女』のミシェルは他人の心の闇に入り込んでしまい、この映画のジョバンニは、自分の心の悲しみで精神分析を続けることができなくなってしまった。

【息子の部屋 第36段落】  『 監督ミケーレの黄金の夢 (1981) SOGNI D'ORO 』は 1881 年ヴェネチア国際映画祭の特別金獅子賞、『 ジュリオの当惑(とまどい) (1985) LA MESSA E FINITA 』は 1986 年ベルリン国際映画祭の銀熊賞、カンヌ国際映画祭では『 親愛なる日記 (1993) CARO DIARIO 』の 1994 年監督賞と本作の2001年パルム・ドールと、世界三大映画祭を全て制覇した、監督としてすばらしい経歴のナンニ・モレッティ。俳優としても、自分の監督作品に必ず主演しているようだし、 1977 年カンヌのパルム・ドールに輝いた、パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ兄弟監督の『 父/パードレ・パドローネ (1977) PADRE PADRONE 』にも出演しているなど、活躍を見せている。ガンは完全に治っていらっしゃるのでしょうか。転移が心配です。長生きして、よい作品をもっと作っていただきたいです。

以上。
<もっと詳しく>からスペースを含まず8877文字/文責:幸田幸

参考資料:「映画の森てんこ森」映画タイトル集
       http://www.coda21.net/eiga_titles/index.htm
      IMDb
      allcinema ONLINE
      Nostalgia.com
      CinemaClock.com
      Yahoo!
      http://spazioinwind.libero.it/musicaememoria/BrianEno-ByThisRiver.htm
      Los Angeles Times
      公式サイト(仏語版)
       http://www.bacfilms.com/chambre/"
■映画『 息子の部屋 』の更新記録
2003/01/10新規: ファイル作成
2004/07/07更新: ◆テキストとリンク一部およびファイル書式
2005/03/13更新: ◆一部テキスト追記と書式変更
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幸田 幸
coda_sati@hotmail.com
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